巻ノ百五十二 迎えに向かう者達その十
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「そうなりました」
「そうだよね」
「はい、そして」
さらに言う大助だった、見れば彼も炎を出している。槍の刀身に炎を出してそうして闘っているのだ。
「私はです」
「そろそろだね」
「決着をつけようと考えています」
「私もだよ」
「妖花殿も」
「うん、決着をつけようってね」
その様にというのだ。
「考えてるよ」
「そうですか、では」
「秘術を出すよ」
自身のそれをというのだ。
「そうするね」
「それでは」
二人はここでだった、一旦間合いを離した。そうして。
妖花は全身に炎をまとわせた、それは鳳凰の形をしていた。その紅蓮に燃える鳥になり辺りに紅蓮の炎を飛ばしつつ。
大助に向かった、大助もだった。
二本の槍だけでなく全身に炎をまとわせた、彼の炎も紅蓮に燃え盛る。そのうえで妖花に向かって突進した。
両者は炎となり激突した、場が紅に燃え盛り他には何も見えなくなったかの様だった。そうしてその激突の後で。
両者は互いの背中を突き抜ける形で背中で向かい合う形になった。今は二人共身体から炎を出していなかった。
二人は一瞬しかし二人にとっては永遠とも思える位長い間動きを止めていた。勝敗はつかなかったかの様に見えた。
だが妖花の膝がだった、その永遠に思える一瞬の後で。
崩れた、それで妖花は自ら言った。
「残念だけれどね」
「負けをですか」
「ええ、そうよ」
まさにそれをというのだ。
「認めるわ」
「そうですか」
「貴方は片膝も折れなかったわね」
「危うかったですが」
「それでもね」
「この様にです」
万全に立っている、まさにだった。
「それもあってですか」
「そうよ、私は負けを認めるわ」
こう大助に言うのだった。
「まことに」
「そうですね、それでは」
「貴方の勝ちよ、ではね」
「御首をですか」
「渡すわ。切るといいわ」
「いえ」
大助は妖花の背に顔を向けた、そのうえで彼女に話した。
「御首はいりませぬ」
「それはどうしてかしら」
「それがしは勝ちました、それは確かです」
「だからなの」
「御首は手柄の為に得るものです」
こう妖花に言うのだった。
「しかし今のそれがし達はです」
「手柄を目指すものじゃないというのね」
「はい、ですから」
だからだというのだ。
「今はいりませぬ、今することは」
「何かしら」
「父上をお迎えすることです」
このことだというのだ。
「ですから」
「そうなのね。では」
「父上は勝たれますと間違いなくです」
それこそというのだ。
「ここに来られます、ですか」
「そう。では私はね」
「去られますか」
「この部屋からね」
そうするというのだった。
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