巻ノ百五十二 迎えに向かう者達その八
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「お互いどちらか、両方が失おうとも」
「それでも」
「恨むことはないとな」
「そうしてですな」
「決着をつけようぞ」
「さすれば」
神老は応えてだった、そしてだった。
神老は無数の手裏剣を放った、その無数の手裏剣は嵐の如く舞い後藤に四方八方から襲い掛かった、その手裏剣達を。
後藤は槍で落としそのうえで。
神老に突き進み槍を繰り出す、神老人はその無数の突きをだ。
かわしていく、だがそのうちの最後の一撃が。
神老人の頬を掠めた、そこで両者の動きは限界に達しどちらも動きを止めたが。
ここでだ、神老は言った。
「掠めたその分が」
「まさにと言うか」
「はい」
その通りだというのだ。
「勝敗ですな」
「はい、それこそが」
「ではわしの勝ちか」
「それがしはもう動けませぬ」
「わしもじゃ、動こうとすれば」
それならばとだ、後藤も言う。
「それはな」
「まさにですな」
「仕切り直しとなるが」
「しかしもう秘術は出せませぬな」
「お互いにそうじゃな」
「では」
「わしの勝ちとか」
「はい、それがしの秘術は破られ」
そしてというのだ。
「後藤殿の槍はです」
「お主を掠めた」
「それがです」
まさにというのだ。
「勝敗の分れ目でしょう」
「だから言うか」
「それがしの負けです」
そのことを認めた言葉だった。
「ですから」
「お主の首をか」
「お取り下され」
神老はこのことも自ら言った。
「どうぞ」
「いや」
後藤は神老にこう返した。
「それはよい」
「勝たれたというのに」
「だから言ったな、わしはもう一介の浪人」
「だからですか」
「もう首を取ってもな」
例えだ、そうしてもというのだ。
「手柄にもならぬ、だからな」
「それがしの首はですか」
「よい」
一切という言葉だった。
「もうな」
「左様ですか」
「お主の命はいらぬ」
こう告げたのだった。
「全くな」
「わしは真田殿を迎えに行く」
幸村、彼をというのだ。
「この御殿の一番奥に向かいな」
「そうされますか」
「ただ一つ言っておく」
ここで神老にこうも告げた後藤だった。
「大御所殿とのことは真田殿のこと」
「後藤殿はですか」
「敵味方ではあるが」
それでもというのだ。
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