90部分:第七話 二人の仲その十五
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第七話 二人の仲その十五
「佐藤はさ」
「私はね。ちょっとね」
「ちょっと?」
「苦労してるわよ」
こう言ったのだった。これは本当のことだった。
「本当にね」
「そんなになの」
「そうなのよ。部活も大変だし勉強も追いつかないと大変だし」
「うちの学校厳しいしな」
「そうよね、進学校っていうのは本当ね」
本音で話す。本当に思っていることである。そしてである。
「かなり大変よ」
「けれどこの学校に入ったんだよな」
「まぐれよ」
実際にこう思ってもいた。死ぬような受験勉強を経ていたがそれでもである。受かったのは運だと。今でも思っていたのである。
「あれはね」
「まぐれでも入れただろ?」
「入れたけれど」
「それじゃあ大丈夫じゃないか」
陽太郎は明るく笑って言う。その笑顔は爽やかなものだった。
「それなりのものがあるから入られたんだよ」
「そうなの」
「そうさ。だからしっかりと自信をもってやっていけば大丈夫だよ」
「あんたは成績いいじゃない」
星華はまずはこう返した。
「中学の時から」
「それさっきも言わなかったか?」
「言ったけれどそれでもよ」
言うのであった。
「私は違うから」
「けれど毎日少しずつでも勉強していったら違うからな」
「毎日ね」
「一応してるんだろう?」
「ええ」
こくりと頷く。これはその通りだった。
「やっぱり。毎日しないと」
「じゃあいけるんじゃないのか?」
「追いつくのに必死よ」
困った顔で言った。そこに今の彼女の考えが出ていた。
「本当にね」
「けれど勉強していたら何とかなるさ」
「追試だけは逃れないよね」
それで必死なのだった。
「今思うのはそれだけよ」
「追試かあ」
「あんたには関係ないでしょうけれどね」
「いや、俺も最近理科がさ」
「危ないの?」
「結構」
こう言うのである。
「危ないのよ、これがね」
「そうなの。意外ね」
「いや、実際にこれが。物理って難しいよな」
「えっ、物理!?」
物理と聞いてだった。星華の顔が急に歪んだ。実は彼女は物理が大の苦手である。当然嫌いな科目の第一位でもある。そこまで嫌いなのだ。
「物理って」
「ああ、それ受けてるんだけれどな」
「そんなの受けてりゃ困るのも当然じゃない。あんた文系よね」
「ああ、そのつもりだけれどな」
「それで何で物理なのよ」
「国立受けようとかも思って。やっぱり止めておいた方がいいかな」
「八条大学でいいじゃない」
星華は言う。
「そうでしょ?八条大学でね」
「そうしようか、やっぱり」
「そうしなさいよ。ところでさ」
「ああ。何?」
「ええとね」
言おうとしても中々言葉が出ない。それに困った。しかしそれでも何とか
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