86部分:第七話 二人の仲その十一
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第七話 二人の仲その十一
「だから。絶対に護る」
「けれどよ、椎名ってよ」
「強いの?」
狭山と津島が気にするのはこのことだった。相手のことをだ。
「そんなによ」
「小柄だからそこまで強いようには」
「強いよ」
その二人に答えたのは赤瀬だった。
「椎名さん空手とかムエタイもしているから。足技が特にね」
「そうか。赤瀬が言うんならな」
「本当みたいね」
「僕もね」
赤瀬の言葉が続く。
「椎名さんが本気になったら勝てないかも」
「そこまで強いのかよ」
「あんたまでって」
「赤瀬には負けるから」
しかし椎名はこう言うのだった。その小さな口でサンドイッチを食べながら。食べる口は小さいがその速さはかなりのものである。
「体力が違い過ぎるから」
「そうかな。身体の急所蹴られたら終わりなんじゃ」
「大丈夫。赤瀬はスピードもあるから」
「その巨体でスピードもあるのかよ」
「赤瀬も凄いのね」
狭山と津島は驚くばかりだ。彼等にとっては信じられない話である。
そうした話をしていた。そしてここでまた陽太郎が言った。
「何か凄い話になってるけれどさ」
「ああ、そうだな」
「あんたよね」
狭山と津島が彼の言葉に応える。そうしてだった。
「御前それで西堀さんとは」
「どうなのよ」
「どうなのよって言われたら」
「私も。それは」
その横では月美が小さくなっている。そのうえでの言葉であった。
「別にそういうことはないですけれど」
「そうだよ。俺だってさ」
「だからよ。特に気にすることはないからよ」
「そうよ。悪いこととかしないとね」
狭山や津島はそれでいいというのだった。しかしである。
二人はそれでもだ。まだ否定しようとする。
「だから。それは」
「その」
「もう言葉はいらない」
また椎名がここで言う。
「なるようになる」
「なるようになるのかよ」
「あの、愛ちゃんだから」
「いいから」
しかしである。椎名はまだこう言うのだった。そして最後の言葉は。
「応援する」
「応援って」
「じゃあ」
こうして話は終わった。二人のことは周りに認められた。しかし二人は気恥ずかしいのかそれを周りに見せることはなかった。だから周りに見つかることはなかった。
だがここでだ。うっすらと気付いた面々もいた。
「ねえ、最近の西堀ってさ」
「そうよね」
「何かうきうきしてる感じ?」
「何かあったのかしらね」
星華と三人が教壇のところに立って彼女を見ながらだ。こう話していた。月美はいつも通り椎名と一緒である。それで四人も手が出せなかった。
「あったからああいう感じなんでしょうけれど」
「それでも何よ」
「すっごい生意気」
「そう思うわよね」
「本当にね」
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