第一章
第10話 手合せ
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、これだとわからないなあ。もう一回かな」
仕切り直しとなった。
恥ずかしいんでギャラリーのほうは見ない。どうせ笑っているのだろう。
「はじめ!」
またカイルが面打ちのような動作に入る。
今度はさっきより速い。
俺は瞬時に首を左に傾けて……あ、しまった。これはダメなんだった。
ああああ。
「ハイ終わり」
「うう……」
肩の上で木刀が寸止めされている。
剣道だと首を傾けて面打ちを外すということをよくやるので、癖が出てしまった。
よく考えれば、それでは頭の代わりに肩を斬られてしまうだけだ。
「兄ちゃん、今のは何がしたかったの……」
「すまん。今のは忘れてくれ……」
「うん、じゃあもう一回だね」
俺、ちょっと落ち着け。
何かできるはずだ。
このままだとやる気がないと判断されそうだ。それは避けたい。
動きは見えている。
あれだけ大きく振っているわけだから、初動をとらえて小手打ちなら入るかな?
やってみるか。
「はじめ!」
また同じようにカイルが振りかぶろうとする。
そこをとらえて小手打ち……
ゴンッ
「うっ」
「あっ」
げげ……。
入ったはいいが、寸止めを忘れた。
いつも使っている竹刀のつもりでやってしまった。
「ごめん。寸止めするの忘れてた。大丈夫か?」
「あ、うん。大丈夫だよ。でもこの勝負は兄ちゃんの勝ちだね」
「……」
指導対局のようなものだし、三戦ともすぐ終わってしまったので、カイルの強さというのはよくわからなかった。
が、実力差が離れているであろうということは何となくわかる。実戦になったら、今の俺では何もできないままねじ伏せられるのだろう。
「兄ちゃん結構目がいいよね? オレの動きもちゃんと追えているみたいだし。ちょっと足せばケンドーをベースにしたやり方でいけるんじゃないかな?」
「そうなのかな」
「うん。直さないといけないところはいっぱいありそうだけど。いまのも、寸止めを忘れていたにしては当たりが軽すぎだし。あれだと相手が剣を落としてくれないと思うよ」
やはりカイルはきっちり見ていたようで、細かい感想をくれた。
「今日は時間切れなのでこれで終わり。また明日もがんばろうね」
「ああ、ありがとう。悪いな、そちらの休憩時間も潰れるのに」
「いいのいいの」
「……俺、汗かいているんで抱きつくのはやめてくれ」
「へへへ。大丈夫だよ、兄ちゃん臭くないから」
「……」
彼は俺の師匠になってしまったので、振り払いづらくなってしまった。
加齢臭でも出しておけばいいかな。
ギャラリーはまだいた。
「おつかれさま!」
「いてっ……はいど
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