暁 〜小説投稿サイト〜
緑の楽園
第一章
第10話 手合せ
[2/3]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
、これだとわからないなあ。もう一回かな」

 仕切り直しとなった。
 恥ずかしいんでギャラリーのほうは見ない。どうせ笑っているのだろう。

「はじめ!」

 またカイルが面打ちのような動作に入る。
 今度はさっきより速い。

 俺は瞬時に首を左に傾けて……あ、しまった。これはダメなんだった。
 ああああ。

「ハイ終わり」
「うう……」

 肩の上で木刀が寸止めされている。
 剣道だと首を傾けて面打ちを外すということをよくやるので、癖が出てしまった。
 よく考えれば、それでは頭の代わりに肩を斬られてしまうだけだ。

「兄ちゃん、今のは何がしたかったの……」
「すまん。今のは忘れてくれ……」
「うん、じゃあもう一回だね」

 俺、ちょっと落ち着け。
 何かできるはずだ。
 このままだとやる気がないと判断されそうだ。それは避けたい。

 動きは見えている。
 あれだけ大きく振っているわけだから、初動をとらえて小手打ちなら入るかな?
 やってみるか。

「はじめ!」

 また同じようにカイルが振りかぶろうとする。
 そこをとらえて小手打ち……
 ゴンッ

「うっ」
「あっ」

 げげ……。
 入ったはいいが、寸止めを忘れた。
 いつも使っている竹刀のつもりでやってしまった。

「ごめん。寸止めするの忘れてた。大丈夫か?」
「あ、うん。大丈夫だよ。でもこの勝負は兄ちゃんの勝ちだね」
「……」

 指導対局のようなものだし、三戦ともすぐ終わってしまったので、カイルの強さというのはよくわからなかった。
 が、実力差が離れているであろうということは何となくわかる。実戦になったら、今の俺では何もできないままねじ伏せられるのだろう。

「兄ちゃん結構目がいいよね? オレの動きもちゃんと追えているみたいだし。ちょっと足せばケンドーをベースにしたやり方でいけるんじゃないかな?」
「そうなのかな」
「うん。直さないといけないところはいっぱいありそうだけど。いまのも、寸止めを忘れていたにしては当たりが軽すぎだし。あれだと相手が剣を落としてくれないと思うよ」

 やはりカイルはきっちり見ていたようで、細かい感想をくれた。

「今日は時間切れなのでこれで終わり。また明日もがんばろうね」
「ああ、ありがとう。悪いな、そちらの休憩時間も潰れるのに」
「いいのいいの」
「……俺、汗かいているんで抱きつくのはやめてくれ」
「へへへ。大丈夫だよ、兄ちゃん臭くないから」
「……」

 彼は俺の師匠になってしまったので、振り払いづらくなってしまった。
 加齢臭でも出しておけばいいかな。



 ギャラリーはまだいた。

「おつかれさま!」
「いてっ……はいど
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ