18話:父の憂鬱
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し、ケーフェンヒラー男爵もご協力して下さっていますから。陛下のご恩情により、難民ではなく生活費も多少は持参いただけるようですし何とかなるでしょう。」
帰還兵の取り扱いについては、帰還者だけでなく戦死者の家族も農奴から解放され、多少の生活費を支給されたうえルントシュテット領に移住することとなった。
本来なら当家の領地に移住するような話ではなかったが、勅命であるにも関わらず、帰還兵の家族を農奴から解放するのを惜しんだ貴族が、社会秩序維持局と組んで思想犯として強引に逮捕し、帰還兵もろとも農奴にしようと企んだことから話が大きくなった。
結果としては、そもそも自領の農奴が大量に思想犯になるような領地経営をするような者に経営を任せる事は出来ないと陛下は判断され、特に多く容疑者を出していた貴族数家がおとり潰しとなった。
その上で、容疑者とされた帰還兵や家族たちは、親族が奮戦したにもかかわらず農奴になるようなことがあれば、多少は不満に思うこともある。その不満が元で思想犯と誤認されたとされ、無罪の判断となった。
ここまでは良かったが、一度強引に思想犯にされかけた者たちはハイそうですか、と今までの生活には戻れない。庇護を必要としその先が当家だったと言う訳だ。捕虜交換を願い出たのも当家であったので庇護が期待できると判断したらしい。
結局、帰還兵と戦死者の家族が我も我もと希望し、800万人をあたらしく受け入れる事になった。皇室領ではとの話もしたが、直轄領では社会秩序維持局の色が強く不安が残ると言われれば断れなかった。
皇室としては、多少の生活費を支給した所で、取り潰した家の資産があるから収支は黒字だろう。勅命を捻じ曲げようとしたのだ。おとり潰しもやむ終えまい。ただ。ザイトリッツがニコニコしながら強欲は過ぎれば身を滅ぼすと本で読みましたがその通りですね。などと言った時には正直、胃が痛くなった。
そういう部分は母上には見せていないのだろう。次男のコルネリアスも態度を使い分けている節がある。全く困ったものだ。
「ザイトリッツと話していたのですが、当領は単身者の男性が不足しているという話だったから、そこも補えるし、ひと踏ん張りという所ね。」
母上は領地経営に不安はないらしい。不安をまったく感じない笑顔で話が続く。事態を正確に理解されているのだろうか。
「母上、統治にかかるコストも造船ドックにコストもかなりの額になるはずです。ご不安はないのですか?」
「まあ、ニクラウス。あなたちゃんと領地経営の資料を読んでいないわね。領地の収益は年間600億帝国マルク以上増えているの。予算も取れるし安心して大丈夫です。」
領地経営の当事者である母上が大丈夫だというなら、お任せしている私があれこれ言える立場ではない。この数年で領地の収益がハ
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