第6章:束の間の期間
第172話「予兆と決意」
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香さん、光輝さん。傍にいててください。……私たちよりも、親のお二人の方が適任だと思います」
「……私も、同意見です」
シャマルさんが誰か側にいるべきとばかりに何か言おうとしたので、それを私と奏ちゃんが遮るように上乗せする。
「そう?いつも仲がいい二人もいた方が……」
「そのいつもいた私たちの前で、優輝君は倒れたんです。……私たちじゃ、優輝君の支えにはなれないんです……!」
適任に見えるだろうけど、そうじゃない。
私たちでは支えになれない。……それがとても悔しかった。
「そういうことなので、お願いします……!」
「私からも、お願いします……!」
「……そこまで言うなら、わかったわ」
「ああ。俺たちに任せてくれ」
出来る事ならば、私たちも支えたい。でも、それが出来ない。
そんな想いが伝わったのか、二人は了承してくれた。
「じゃあ、シャマルさん」
「はい。何か異常があればまた」
診察も終わり、シャマルさんと共に私たちも部屋を出る。
……後は、両親である二人に任せよう。
「二人も、まだ完全に回復しきっていないのだから、無理しないでね?」
「はい」
「わかってます」
すぐにシャマルさんとも別れ、私と奏ちゃんの二人きりになる。
「……ねぇ、奏ちゃん」
「……何かしら?司さん」
どこへともなく、二人並んで歩く。
胸中に渦巻く感情の前に、向かう先なんて関係なかった。
「同じ“前世の優輝君を知る”転生者として、話があるの」
「……奇遇ね、司さん。私も、そう思っていたわ」
どうやら、奏ちゃんも同じ考えらしい。
すぐさま近くの談話室に入る。
「私の前世の話は……知ってるよね?」
「……ええ。優輝さんから聞いているわ」
手始めに、前世での優輝君との関係を確認する。
私の場合、幼馴染。奏ちゃんは……。
「恩人……だったっけ?」
「……ええ。病院にお見舞いに来てくれて、そして心臓のドナーになったのが優輝さん。……そのおかげで、私は病院以外の世界を知る事が出来たわ」
「そっか……」
私の場合は転生してから、奏ちゃんの場合は前世の時点で。
私たちは、優輝君に救われている。
「……私たち、ずっと頼りっぱなしだったよね?」
「……そう、ね」
絞り出すように切り出したその言葉に、奏ちゃんも俯いて同意する。
……そう。私たちはずっと優輝君に頼りっぱなしだ。
「このままじゃ、いけないよね……」
「そう、ね」
「……っ……!」
言葉にするだけで、自分が情けなく思えて涙が出てくる。
何より、優輝君がここまでなるのに気づけなかった
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