第6章:束の間の期間
第172話「予兆と決意」
[3/9]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
らない程の傷を負っていた。……本来なら、戦いの最中に死んでもおかしくなかったんだ。それでも、ここまで生きててくれた」
歩みを止めた二人に合わせ、僕も止める。
「……でも、悲しいものは、悲しいよな……?」
「優輝、君……」
振り向いてそう言った僕の頬を涙が伝う。
その上で、作り笑いを浮かべた。
「感情を失って、家族をまた失って……」
「優輝君……!」
「優輝さん……!」
二人が悲痛な声を上げる。
おそらく、涙を流す僕を見ていられなかったのだろう。
「(頑張っても、足掻いても、報われない時がある。あぁ、本当に―――)」
それだけじゃない、どこか、視界が白く……
―――人は、難儀なもの、だなぁ……
―――だからこそ、“僕”は人の可能性に惹かれたんだ
=司side=
「優輝君!?」
「優輝さん……!」
涙を流す優輝君は、そのまま崩れ落ちるように気絶してしまった。
「一体、何が……」
すぐさま奏ちゃんと共に優輝君の容態をチェックする。
軽く見た限り、体には気絶するほどの異常はない。
だったら、これは……。
〈これは……精神の疲労ですね〉
「シュライン……やっぱり、そうなの?」
〈私も同意見です。感情を失ったとは言っていましたが、それでも負荷はかかります。……あのお二人がいなくなった事が原因でしょう〉
「そう……」
シュラインと奏ちゃんのエンジェルハートが魔法による解析結果からそういう。
「とりあえず、安静にした方がいいよね……?」
〈はい〉
「司さん、部屋まで運ぶわよ」
「うん。あ、でも……」
優輝君を私が背負おうとして、ふと気づく。
今の優輝君は髪は切ったとはいえ、体は女性だと分かってしまう状態に。
「……私が認識阻害を掛けておこう」
普段の優輝君を想像しながら魔法を使えば、まずばれない認識阻害が出来るだろう。
すぐにそれを実行して、改めて背負う。
「奏ちゃん、シャマルさんと……後、優輝君の両親を呼んできて。それと、クロノ君とリンディさんにも一応伝えておいた方がいいかな」
「わかったわ」
身体強化魔法を使って速く、それでいて静かに優輝君の部屋へと向かう。
「(優輝君……)」
……思えば、私達はよく優輝君を頼っていた。
力としての強さだけでなく、精神的な強さとしても。
でも、頼られる側の優輝君が頼る存在は少ない
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ