第6章:束の間の期間
第172話「予兆と決意」
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は強さの糧になりやすい。
それを踏まえても調子が良すぎた。
確かに体にガタが来ている。それなのにしっかり動くのだ。
……正しくは、ガタが来た分鈍くなったのを補う程、早く動かせるのだ。
「……やはり、椿と葵か」
そう。考えられるとしたら二人の力の上乗せだ。
“憑依”による力の増加が、未だに残っているのだ。
厳密には、体に定着したと考えるべきか。
「弓矢とレイピアの生成が創造魔法を使わなくても可能……おまけに、二つの扱いも以前より向上しているか」
淡く翡翠色に輝く、螺旋状に束ねた蔦の弓。実体を持たない同じ色の矢。
そして、いつも葵が使っていたレイピア。
これらが創造魔法を使わなくても作れるようになっていた。
ついでに言えば、創造魔法と併用すれば負担も消費も激減する。
「……それと……」
確認するように、“膨らみかけの胸”に手をやる。
……そう。僕は神降しの代償で既に性別が変わっている。
「……今までは、体に精神が影響されていたけど……」
しかし、口調や一人称はそのままだ。
おそらく、感情を失ったため、影響を跳ね除けているのだろう。
「演技の必要がないのは楽でいいな。後は霊術による認識阻害だけか」
誰かに見られない内に術式を発動させておく。
……いや、待てよ?
「髪を切って整えて、サラシで誤魔化すか」
今アースラには別の陰陽師もいる。
霊術に感づかれるだろうから、簡単な変装で誤魔化す方が無難だろう。
声色は自力で変えられるから無問題だ。
「……いるんだろう?司、奏」
「……やっぱり、バレた?」
「さすが優輝さん」
入口へと声を掛けると、物陰から二人が出てきた。
どうやら、隠れて僕を見ていたらしい。
「神降しの代償、やっぱり出たんだね」
「でも、口調とかはそのまま……」
「まぁ、な。今の僕は感情を失っている。多分、肉体の影響も受け付けない状態なんだろう。だから、口調とかはそのままだ」
そう言いつつ、僕は髪を切り、サラシを創造する。
「……ねぇ、さっきの弓矢とレイピアって……」
「……僕らが鍛えただけあって、気づいてしまうか」
更衣室へ向かいながら、司が尋ねてくる。
口には出していないが、奏も気づいていたみたいだ。
「……消えたよ。深夜の時に、確かにあったはずの存在感が、消えてしまった」
「ッ……つまり……」
「……死んだ」
目を見開き、信じられないと言った風に口元を手で押さえる司。
奏も信じられないと開いた口が塞がらないようだ。
「考えてみれば、ここまで持ったのが凄いぐらいなんだ。僕に憑依する前、二人は既に回復もままな
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