第一章
第9話 叱責
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孤児院に入って二週間程度経った、ある日。
俺とクロは、町長に呼び出された。
理由は「そろそろ落ち着いていると思うので、一度報告が欲しい」とのこと。
――気にかけてくれているんだなあ。
と、感じる……わけだが。
もともと町長の紹介で孤児院に入ることになったわけなので、落ち着いたら自主的に報告とお礼をしに行くべきだったような気がする。
「そういえば。紹介してやったはいいが、その後あいつはどうなったんだ?」となって呼び出されたのであれば、かなり失礼なことをしてしまったかもしれない。
こういうことに気づけないのは、おそらく自分の悪いところだ。
面会時間は、こちらの昼休みに設定されていた。明らかに、俺の院での活動に支障が出ないように配慮したと思われる時間設定だ。
町長は自身の休憩時間を潰して俺に会うのだろう。非常に心苦しい。
「やあ、リクくん、クロくん。元気だったかな」
「おかげさまで元気です。せっかく院に入れてもらったのに、そのあと何も報告していなくてすみません」
「いやいや、君も大変だっただろうからね」
手振りで座るよう促されたので、俺は執務室のソファーに座った。
クロはそのすぐ横で、お座りの姿勢になる。
最初に相談に来たときと同じかたちだ。
「今日は、簡単にで構わないので、今の君の状況を聞かせてほしい」
「はい」
俺は、院で毎日勉強している内容や、帰る方法を見つけるための調査の進捗具合などを伝えた。
「……そうか」
町長は顎を触りながら、しばらく考えていた。
「院での生活はうまく行っているようだね。クロくんもみんなに可愛がってもらっているようで何よりだ。図書館での資料探しも、少し進展があったのはよかった」
クロは俺のすぐ隣にいる。
町長の話をどこまで理解しているのかはわからないが、じっと町長を見据えていた。
「だが――」
「?」
「今聞いた話では、剣術や体術の類はやっていないということでよいのかな?」
「はい、やってないですね」
「なぜだい?」
「えっと。院のカリキュラムにないので」
「ふむ……」
町長は一度俺から視線を外し、クロと目を合わせた。
一瞬、クロに向かって、ほんの少し頭を下げたようにも見えた。
そしてやや引き締めた表情で俺のほうに顔を戻すと、続けた。
「今日、君を呼んでおいてよかった」
「……?」
「今のままではダメだ」
「え」
「君はいずれ旅に出ることになる。そしてそれは、町をブラブラ歩く観光旅行などではない。探検に近い性質の旅になる。そうだろう? なのに護身もできないまま行くつもりなのか?」
「…………」
「そもそも、君はこの町まで自分の足で歩いてきたのかな?」
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