第一章
第9話 叱責
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だ。
やろう。
やらなければ。
「まあ、小言はこれくらいにしてだ。私からプレゼントがある」
「プレゼント?」
町長は後ろの棚から、大きく、そして細長い金属の塊を持ってきた。
驚いて、驚きすぎて、思わずその場で立ち上がってしまった。
「……! これは……」
それは、柄があり、鍔があった。
そして、鞘もあった。
「私が使っていた剣だ。片刃で、峰打ちもしやすいように調整されている。おそらく君にぴったりだろう。ぜひ受け取ってほしい」
「でも、こんな高そうなものを……」
「もう私には必要ないものだ。私はすでに自分や周りの人間の身を守る立場ではない。この町のすべての人間の生活を守る立場だ。そのために必要なものは剣などではない」
「……」
「さあ、手に取りたまえ」
「……はい」
ゆっくりと手に取った。
その片刃剣は、その質量以上に重く感じた。
「わかっていると思うけれども、カイルくんに頼むときはきちんと頼むようにな。この国はそういう国だ」
「はい。大丈夫です。ちゃんと頼むようにします」
最後に、立ったまま、全身で礼をした。
「本当に、ありがとうございました」
***
「え? あ、えっと、兄ちゃん、一体どうしちゃったの?」
「剣術と体術を教えてください。この先必要になるのは間違いないから。このとおり、お願いします」
「あ、あの、えと、そっちのほうが年上なんだし、そんなにかしこまってお願いしなくても、ちゃんと教えるよ? ホラホラ、それは最敬礼ってやつでしょ? やめてよ、頭あげて。何かこっちが申し訳なくなるじゃんか…………げっ、なんで泣いてるの? どこか具合悪いの? それともオレ、何か悪いことしちゃったかな?」
「いや、違うんだ。そうじゃないんだけど……」
生まれて初めて、教えてもらうためにきちんと頭を下げた気がした。
本来、モノを教わるときは、こうやって教えてもらうものなのだろう。
席に座ったまま、さあ教えろやというのは違うんだよな……。
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