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緑の楽園
第一章
第9話 叱責
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「いえ、違いますね……」

「そうだね。野犬に襲われて、クロくんに助けられて、気絶している間にカイルくんにおぶってもらってきたはずだな。この国は君の国よりもはるかに厳しい環境だろう? 町の外を歩けば、普通に野犬や野獣がいる。武装した野盗だってそこらじゅうにいるぞ? それを忘れてはダメだ。クロくんだっていつも君を守れるわけではないだろう。
 このままでは、私は君が町の外に出ることを許可するわけにはいかない。剣も振れない、受け身も取れないでは、旅に出ても命を落とす可能性が高いからね」

 町長の指摘はかなり手厳しい。
 確かに、元にいた日本を旅するのとは訳が違う。自分の身を守る手段がないとなると、町の外に出ても、町長の言うような末路が待っているだけかもしれない。

 そして、それを俺は認識していながら放置した。
 自分がいた日本で培ってしまった癖が出ていたのだ。
 「必要ですけど。用意されていないからやっていません」というのは、いかにもな言い訳だ。用意されていないなら能動的に取りに行かなければならなかったのだ。

「どうだい。何をしなければならないか、わかるかな」
「あ、はい。カリキュラムにないなら自分から誰かに教わらなければ、ということですね……」
「そのとおりだ。すぐ近くにいるじゃないか。よい先生が」

「……? もしかして、カイルですか」
「そうだ。君は知らないかもしれないが、彼の剣術と体術の腕は、おそらくこの町で一番だ」
「……!」

 カイルのやつは剣術と体術までできるのか。しかも十三歳で町一番?
 どれだけチートなのか。もはや人間では……

 ……いや、人間か。
 有名なスポーツ選手などはだいたいそういうものだった気がする。
 あのテニス選手は、十三歳で国内の選手にはだいたい勝てただろう。
 あのスケート選手は、十三歳の頃にはどの大人よりも素晴らしい演技ができたはずだ。
 あの水泳選手だって、その年齢のときには既にとてつもないスピードで平泳ぎができたはずだ。

 しかし、彼らはれっきとした「人間」だ。
 シッポが生えていたわけでもないし、大猿に変身できたわけでもない。
 人間の枠内で他の誰よりも努力したのだ。
 それをチートで片づけるのは本人に失礼すぎる。

 俺に才能があるとはあまり思えないが、努力なら少しはできるかもしれない。
 とにかく、この先明らかに必要になるのに見ないフリをして放置なんてことは大悪手だ。

「空いている時間はあるのだろう? 彼にどんどん教わるといいよ」
「……はい」

 旅に出るのがどれくらい先になるかはわからない。
 でも、このまま行ってもダメなのは確かだ。護身術を少しでも身に付けなければならない。付け焼刃であろうが、ゼロよりはマシなはず
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