REST STAGE :灰被りの憧憬
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よ? ばれたらあたしもおねーちゃんとおかーさんに叱られるかもしれないけどこっそり着せてあげるんだから、感謝してほしいくらいじゃない?ねえアッシュちゃん」
「ううう……」
せっかく着た綺麗な洋服を似合わないと笑われ、まるでおもちゃにされてるみたいで恥ずかしかった。涙をぼろぼろ零す自分を、マズミはわかっているのかわかっていないのか。
「ほら、アッシュちゃんもうれしくて泣いてるー。だから、アネモネちゃんは気にしなくていいよ。それとも、替わってあげる? あたしは、それでもいいよ」
「……いえ、それなら……いいです……」
そんな日々が、二年続いた。
それが終わりを告げたのは、ある月の綺麗な夜だった。満ちても欠けても綺麗な月は、ぼろぼろの服がみすぼらしく、綺麗な服を着てもちっとも似合わない自分とは正反対で。
「お母さん……わたし、お母さんのところに行ってもいい……?」
ほかの家族がパーティーに出かけた夜。ラディは二階の洗濯物を干すベランダで夜空を見上げたあと、下を向いた。この家は大きく。二階からでも十分な高さがある。落ちれば、命の保証はない程度には。
こんな家族とは一緒にいたくない。お空の上で、お母さんに会えるなら……そんな思いがラディの胸を占める。
手すりから身を乗り出し、全てを投げ出そうとしたとき。
ズン!!と音を立てて家が、地面が揺れた。とっさの出来事に慌てて体を戻し、屈め、揺れが収まるのを待つラディ。地震などそう起こらないアローラで、ラディの人生の中では初めての経験だった。
「あ……お洋服が……!!」
干された洗濯物は地面に落ち、無残に土で汚れていた。衝撃で飛んで行ったものもあるかもしれない。
みんなが帰ってきたら絶対に怒られる。何日も食事を抜かれるかもしれない。死のうとしていたことも忘れ、一階に降りて慌てて服を拾おうとする。
階段を降り、ドアを開けたラディ。
そこには、一人の女性が立っていた。雪原のような白い肌、磨いたフォークの先端よりも細く銀色の髪。アローラでは珍しい、長そでに手袋、長ズボンに黒いブーツ。
頬に施した青い三角ペイントの上にある目が、監視カメラのように鋭くラディを見つめていた。
「質問です。貴女が、アッシュ・グラディウス様ですね?」
「誰……?」
「回答です。スズ・ブルーヒルデと申します。請願です。あなたを助けてあげる代わりに、あなたに助けてほしい人達がいます」
「あの、今かあさまが家にいないのでまたあとで……!」
早くしないと洗濯物がさらに汚れてしまうかもしれない。ラディはそれだけ言って離れる。
洗濯物を抱えようとしたとき、
「あ……!待って!」
風で飛んで行ってしまうのだとラディは思った。言葉で止まるはずもなく、洗
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