第一章
第8話 神託
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の子のイメージそのままである。
「やあ」
「あ、リク兄さん」
寝ているクロの背中を撫でながら、ジメイが答える。
隣に座ると、彼はなぜか俺の背中も撫ではじめたが、特にとめる理由もないのでそのままにした。
「ジメイはよくクロに構ってくれるよね。犬が好きなのか?」
「神託だから。神さまがクロさんとリク兄さんをよろしくって」
「あはは。お前はいつも神託神託って言うなあ」
ジメイは非常に信心深く、毎日時間を見つけて神社へお参りに行っている。クロについても、神性を帯びた犬であると本気で信じているようだ。
そして、何かにつけて「神託」というのが彼の行動理由になっている。本当に神託があるとは思えないが、彼なりの動機付けなのかもしれない。
その控えめで滅私奉公な性格は、本当の神主さんみたいだ。
「クロ」
「なんだ」
「ここには慣れた?」
「ああ」
ふむ。
「クロ」
「なんだ」
「ジメイに撫でられるのは気持ちいい?」
「…………ああ」
ふむふむ。
「クロ」
「なんだ」
「なんでもない」
「……」
あまりからかうと噛まれそうなのでこのへんにしておこう。
「しかしこの芝生、柔らかくて気持ちいいけど、葉っぱがずいぶん幅広じゃないか? クロはこの芝を今まで見たことはある?」
「私は今まで見たことはない」
「やっぱり。高麗芝じゃないよな、これ」
地面を覆っている芝はニラのような葉の太さだ。ほふく茎も出ているので、一応芝らしいといえばそうなのだが、デカい。
「ジメイ、この芝って何ていう名前なの?」
「セントオーガスチン」
聞いたことがある名前だ。
確か、関東よりももっと暖かいところに植える芝だったような。
***
また、一日が終わろうとしている。
「ハイ、今日も一日お疲れ様でした。兄ちゃんどうだった? 何か進んだ?」
「……カイル。なぜお前はベッドの中で反省会を開催するんだ」
「へへへ」
「だいたいベッド二つあるのになんでこっちに来るんだよ。変な関係だと思われるだろ」
「変な関係って何?」
「いや、わからなければいいです」
「そう言う兄ちゃんのほうが変だ」
いや、どう見てもあなたが変です。
「まあ、少し進んだかな。少しだけど大きな一歩というか。うん」
「お。よかったね!」
「いちいち抱きつかんでよろしい」
「へへへ」
職員のカイルも含め、この孤児院は一癖も二癖もある子供ばかりだ。
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