第一章
第8話 神託
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千葉県の人物なので自分も知っているが、江戸幕府の全面的なバックアップがあった彼でも、日本全土の測量には時間がもっとかかっていたはず。十二年は確かに速い気がする。
俺はレンが持ってきた本を、最後まで読んでみることにした。
ヤマガタという男は、町やその周辺の略図を代々作っていた家の生まれであり、出自ははっきりしていた。
つまり、この人物自体が、俺のいた日本から特殊な技術を持ったままワープしてきて測量、製作をした可能性はない。
しかし、本文中には頻繁に「同行した協力者」なる人物が登場する。
名前は書かれていないが、その協力者は高い測量技術を持ち、当時にしては高度な移動の術が使えたと書かれていた。
「移動の術」ってアンタ、とは思ったが。まあそれは置いといて。
確かにこれは怪しい。測量技術を持つ人間が、測量機器やマウンテンバイクと一緒にワープしたとかそんな話かもしれない。
もちろんこれだけでは何とも言えないし、思い違いの可能性もあるが……。
とりあえずこの「協力者」については情報を追いかけていくべきだろう。
……というところまで進み、今日は体力も気力も尽きた。
まあそういうことで。くすぐったい。
レンは前腕にはもう飽きたらしく、今度は俺の半袖シャツの裾をめくって二頭筋や三頭筋を触っている。
「ケッカン、ケッカン」
「そこはあんまり血管見えないだろ」
「……そうだね」
「あ、そうだ。全土地図なんだけどさ。今の地図ってこのヤマガタ地図にはない線があるよな? このへんに濃い線が引っ張ってあるけど」
全土地図は、俺の記憶している日本全土地図とそっくりである。
しかし、北関東あたりには濃い線が一本引っ張ってあるのだ。
「そこは国境だよ。今はそこから北は違う国。戦争してる」
戦争があるということに驚いてしまった。
もちろん、自分が関わることはないのだろうが。
「そうか。時代が変われば状況も変わるよな」
「うん」
さて、そろそろ時間か。
「今日はありがとう。お前が来てくれて本当に助かった」
「どういたしまして」
珍しく頭を使ってフラフラになった俺は、まったく平気そうなレン少年とともに図書館を後にし、孤児院へと帰った。
***
疲れていたので、待ち遠しかったお昼寝タイム。
天気も良いし、暖かい。気のせいか、こっちに飛ばされてきてからずっと暖かい気がする。
せっかくなので、院の庭の芝生で寝てみることにする。
お、先客がいた。
クロともう一人、男の子だ。まだ寝てはいないが一緒にいる。
最近、この一人と一匹の組み合わせをよく見る。
男の子の名はジメイ。丸顔坊主の十一歳で、昭和の男
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