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戦国異伝供書
第九話 天守その十二

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「贅沢出来るわ、ねねもお主の女房もな」
「皆ですな」
「贅沢が出来るぞ、そしてやがてはな」
「我等の子達もですな」
「その跡を継いで大名となっていく」
「夢の様ですな」
「全くじゃ、しかし子じゃが」
 これの話になるとだ、羽柴の顔は少し暗くなった。そうして秀長に対してこんなことを言ったのだった。
「わしもお主もな」
「はい、どうしても」
「出来ぬのう」
「左様ですな」
「二人共種なしではあるまい」
「まさか。それは」
「ないな」
 こう弟に問うた。
「流石に」
「そう思いまするが」
「子を授かる湯に行くか、そして神社や寺に参ってな」
「祈願もしますか」
「そして精のつくものも食ってな」
「兎角ですな」
「何でもしてじゃ」
 出来ること全てをというのだ。
「子を授かるか」
「そうしていきまするか」
「二人共な」
「子が出来ぬでは」
「折角大名になってもな」
「家が続きまえぬ」
「それでは何にもならぬ」 
 家としてとだ、羽柴も言うのだった。
「だからな」
「何としてもですな」
「子が欲しい、又左殿なぞじゃ」
「はい、お松殿との間に」
「次から次に子をもうけておるぞ」
「よいことですな」
「殿も子沢山じゃ」
 信長もというのだ。
「明智殿なぞ見よ」
「たま殿ですな」
「あの奇麗なこと」
「まさに珠の如きですな」
「子がおることはよいのう」
 羽柴はしみじみと思うのだった。
「やはり」
「全くですな」
「そう思うからな」
「我等はただ家の禄を上げるだけでなく」
「母上達に贅沢をしてもらうだけでもないぞ」
「はい、我等も子をなし」
「子孫に大名として残ってもらおう」
 こう言ってだ、羽柴は秀長と共に子も授かる様に願いそちらにも努力していた。だがこればかりはどうにならないままであった。


第九話   完


                   2018・7・8
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