70部分:第六話 次第にその八
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第六話 次第にその八
「それって何処に書いてあるの?」
「何処って」
「校則の何条?」
怯んだ星華にさらに言う。
「それで」
「そんなのどうでもいいじゃないの」
星華も負けていない。むきになって返す。
「あんたね、そもそもね」
「だからこのクラスにいて悪いっていう根拠は?」
椎名はあくまでこのことを言い返す。
「それは?」
「ないわ。それはね」
星華もこのことは悔し紛れに返した。
「校則の何処にもね」
「そうね。何処にもね」
「じゃあこのクラスにいるっていうの?」
星華はまだ言おうとする。かなり劣勢であったがそれでもだ。まだ言おうとしていたのである。ここで引き下がるつもりはなかったのである。
「それでだけれど」
「そう、つきぴーと一緒にいる」
「つきぴーって誰よ」
「この娘」
今度は月美を見ての言葉だった。
「この娘がつきぴー」
「はぁ!?つきぴーって何よ」
星華は今度はその目を大きく見開かさせることになった。それにも理由があった。
「何よ、その仇名」
「友達だから名付けた」
椎名は今はこう言うだけだった。
「だから名付けたの」
「あんた達友達なの」
「そう、友達」
「友達いるなんて聞いてないわよ」
星華は実際にそこまで考えていなかった。月美はクラスではいつも一人で本を読んでいる。だから友達はいないと思っていたのである。
しかし今椎名が来てそれが崩された。それでもだった。
「全く、何なのよ」
「何なのって言われても」
「ふん、まあいいわ」
これで止まったのだった。星華もだ。
「もうね」
「そう。じゃあここに」
「けれどね。覚えていなさいよ」
星華は苦し紛れに返した。
「ずっといたら許さないからね」
「大丈夫。休み時間だけだから」
椎名の方が一枚上手だった。まさにだ。
「安心して」
「くっ、このチビっ子」
こうして椎名は月美の横についた。そうして言うのだ。
「じゃあつきぴー」
「うん、愛ちゃん」
「今何読んでるの」
それを問うたのである。
「三島由紀夫?」
「ええ、それなの」
まさにそれだというのだ。
「それ読んでるけれど」
「それで何読んでるの?作品は」
椎名が問うのはそれだった。
「何なの?」
「潮騒」
陽太郎に答えたのと同じ作品だった。
「それだけれど」
「そう。潮騒なのね」
「この作品奇麗よね」
月美は微笑んで述べた。
「こうして読んでいると。何か」
「何か?」
「こうした恋愛もいいなって」
「恋、なのね」
「うん。恋愛ね」
月美は自然と微笑んでいる顔になった。そのうえでの言葉だった。
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