3話:母の憂鬱
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透ももっと進んでいただろう。
「領地経営の事も大変ありがたく存じております。正直オーディンの事で精いっぱいの5年間でした。ニクラウス様ともお義母様に感謝しなければと常々お話しております。」
「領地経営の件はあまり思いつめないで欲しいわ。当家の状況も理解しているし、こういう時の為にレオンハルト様は私に教育されたのですから。ふとした時にあの方がお教え下さった事はこういう事なのねって思い出せるから私にとっても悪くない時間なのです。」
姑がお義母様のような方でよかった。他家では嫁姑の間で、戦死の責任を問いあって言い争うようなこともあると聞く。とはいえ、これでザイトリッツをオーディンで育てるのはもう少し後のことになりそうだ。
いくら気にするなと言われたからと言っても、領地経営をお願いしている以上、ザイトリッツを引き離してお寂しい思いをさせるわけにはいかない。
そうなると幼年学校に入る10歳までは領地で育てることになるだろう。もともと出産直後から先代の生まれ変わりと溺愛していたが、10歳まで養育をお願いするとなると、母としてしてあげられることはほとんど無くなってしまう。今更の事だが、思った以上に速い親離れに寂しさを感じる。
とはいえ、まずは差し迫った問題を相談せねば
「お気遣いありがとうございます。ところでお義母様、明日の件なのですが......。」
明日の話し合いは今回の交通事故の落とし所についてだ。今回の交通事故だが、法的にはこちらに過失はない。
また直系男子が意識不明の重体になり、同乗していた乳母は身を挺してザイトリッツを守る形で死亡していた。貴族同士の事故であれ本来なら謝罪の上、賠償がなされるはずだが、事故の相手が悪かったと言える。
事故の相手は門閥貴族で次期皇帝最有力のリヒャルト殿下を推す派閥の伯爵家の嫡男。しかも飲酒していた。もともと評判の良くなかった人物だが、やっと取り付けた婚約を控えてさらなる悪評は表に出したくない。
だが、多額の賠償金を払う位ならリヒャルト殿下の派閥形成に資金を使いたい。皇族の威光を盾に、無理難題を押し通そうとしてきたのだ。あまりの事に、当主ニクラウスは唖然としたが、やっと門閥貴族の軍部への浸透を抑えだしたタイミングで、門閥貴族と次期皇帝を相手に事を構えるのは躊躇われた。
このままいけばこの件は内々に処理し、通常の賠償金と、軍への糧秣の納入を優先的にできるという形になるだろう。お義母様は黙って話を聞いていた。溺愛するザイトリッツを有象無象のように扱われ、一緒に養育してきた乳母などどうでもいいかのような内容。いつお怒りになるかとハラハラしながら最後まで話終えると、お義母様は意外な反応を返してきた。
「貴方たちの苦労も理解しているわ。納得できるならその内容で進めればよいと思う。た
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