3話:母の憂鬱
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まれたら「ザイトリッツ」と命名してほしいとのことだった。長男ローベルトも次男コルネリアスも先代の命名だった為、不思議に思うと理由が続いた。ローベルトもコルネリアスもお付き合いのある貴族の方から勧められた名前だったらしい。そしてザイトリッツはずっと温めていた名前とのことだった。
少し照れた様子で話す先代に、自分で命名するためにも無事にお戻りください。とお義母様がお話しされていた。考えてみれば温か味を感じた最後の時間だったように思う。
あれから6年。武門の家柄といえば聞こえはいいが、当家を含め軍部に軸足を置く貴族家は門閥貴族とは一線を引く形で婚姻関係を結んできた事が裏目に出た。軍部の貴族の力が弱まった事をいいことに、門閥貴族が軍部に入り込もうとしたのだ。
軍部系貴族は団結したが、いくつかの家は直系が途絶えており世代も若かったため、対抗するのも大変だった。団結できたのは、自分たちの次世代の為でもあった。大敗したとはいえ、今までは軍人としての教育をしっかり受け功績を基に昇進した将官が指揮を執っていたのだ。
爵位だけの素人の指揮で自分たちの子弟が使い潰されるのは私たちにとっては悪夢だ。
第二次ティアマト会戦で先代が戦死してすぐに妊娠してる事が分かった。妊娠後期に星間移動を行うわけにはいかなかった。ザイトリッツを出産して体調が戻ると、私はオーディンに向かった。長男ローベルトと次男コルネリアスは一緒に連れて行くことが出来たが、ザイトリッツはそのまま領地にて、お義母様に養育をお願いせざる負えなかった。
そして5歳になり星間移動にも耐えられる年齢になったためオーディンに呼び寄せた。やっと家族が揃うと思えば交通事故だ。交通事故の件も含め、お義母様にもご報告しておかなければ。
「お義母様、ザイトリッツの容体も安定した様子で安心いたしました。お話は伺っておりましたが、しっかり養育していただいた様子。オーディンで多忙であったとはいえ、お義母様任せにしていたことも事実です。本当にありがとうございます。」
「オーディンの状況は私も理解しています。そのような礼は不要ですわ。それに、私一人で領地経営ではさすがに寂しいもの。ザイトリッツがいてくれたことは私の救いでした。」
お義母様がしみじみと答える。
たしかに私がお義母様の立場なら一人で領地経営など出来ない。
本来、帝国貴族の女性は基本的に経済学・経営学などといった実学は学ばない。領地経営の為の組織がきちんと存在するが先代は早くにご兄弟が戦死したため、自分に万が一のことがあったらと考え、お義母様にご自分でいろいろと領地経営の事を教えていた。
領地経営を任せられるお義母様の存在は不幸中の幸いだった。今の状況に領地経営まで担うとなれば、夫も過労で倒れかねないし門閥貴族の軍部への浸
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