3話:母の憂鬱
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宇宙歴752年 帝国歴443年 1月5日 ルントシュテット家所有車内
ルントシュテット伯爵夫人 カタリーナ
3男ザイトリッツが交通事故にあい、入院した。久しぶりに家族が揃う喜びを感じていたのは束の間の事だった。第二次ティアマト会戦でお義父様、先代のルントシュテット伯爵が戦死して以来、我が家も帝国軍部も非常事態が続いていた。
当主の戦死という事だけでも貴族にとっては一大事だ。だが、第二次ティアマト会戦は帝国軍部と武門の家柄であった貴族層に深刻なダメージを与えた。将官だけでも60名近くが戦死するという大敗を喫したのだ。さすがに6年前という事もあり落ち着きを取り戻しつつあったが、まだ夫は予備役への編入が出来ないでいる。
本来なら伯爵家当主として領地の経営を行う立場であったが、予備役編入を願い出る事ができる状況ではなかった。ただ、もっと深刻な貴族家もある。当家は夫が戦死することは無かったが、2世代ともに戦死した貴族家さえあるのだ。そういう意味では、先代レオンハルト様は何か予感めいたモノを感じていたのだろうか。
軍歴を重ねる中でお世話になったツィーテン元帥が指揮を取るため、自分が参加せねば顔が立たないと言いつつ、夫の従軍は頑なに許さなかった。
自分が不在の間、家をしっかり守るのも伯爵家嫡男としての務めである。とおっしゃっていたが、後からお義母様に聞いた所によると、帝国軍上層部は敵将アッシュビー提督を敵とみる貴族将官が多く、まとまりに欠く部分があったようだ。
嫁いだ私から見ても、先代は絵にかいたような軍人だった。公明正大で命令に忠実ではあるが部下にも配慮を欠かさなかった。そしてルントシュテット家が武門の家柄であることをとても大切にされていたように思う。
夫、ニクラウスとの関係も悪くなかったが、夫には前線指揮官よりも後方支援の適性が高いと判断していたようだ。先代の影響もあり、夫も当家が武門の家柄であることはかなり意識していた。そのせいか、前線指揮官を志向していたので、一時は衝突することもあったらしい。
とはいえ、ルントシュテット家にとっては良い判断だったと思う。先代のご兄弟も戦死されているし、武門の家柄といえば聞こえは良いが、ルントシュテット家の直系は私の子供たち3人しかいない。
領地経営の面を考えれば、夫が後方支援を軸に軍歴を重ねた事は幸運なことだし、血脈を立て直す意味でも、レオンハルト様は次代には前線指揮官はさせるべきではないと考えていたように思う。
最後に先代とお話しした事を思い出す。いつもは出陣前に領地に戻ることなどなかったが、あの時は違った。そして先代、お義母様、私で夕食をとっている際にあるお願いをされたのだ。先代からお願いされる事など初めてで、強く心に残っている。
お願いの内容は、もし3男が生
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