69部分:第六話 次第にその七
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第六話 次第にその七
「それじゃあ」
「私達にとってはいい娘だけれどね」
「そうよね」
「椎名さんってね」
「西堀さんはいい娘なの」
さりげなく月美の評判も聞いておくことにした。今後に役立てる為だ。
「とてもね」
「そう。いい娘なの」
椎名はその評判を聞いてまずは内心喜んだ。親友の評判のよさを知ってそれで喜ばない人間はいない。そういうことであった。
「そんなに」
「優しいし気配りしてくれるし」
「落ち着いてるしね」
「気品もあるし」
評判は確かに上々である。
「大和撫子って感じでね」
「居合も凄いし頭もいいし」
「ちょっとおっとりし過ぎてるけれどね」
「引っ込み思案だし」
「そうなの」
椎名は月美の欠点を聞いても知っているとは言わなかった。これもあえてである。
「そういう娘なの」
「そうよ、いい娘だから」
「私達は意地悪とかしないからね」
「絶対にね」
「意地悪は駄目」
許さないと言いそうになったがそれは心の中で留めた。代わりの言葉だった。
「そういうことは」
「そんなの私達だってわかってるし」
「ねえ」
「仮にも武道やってるし」
「そうそう」
彼女達もそれはわきまえていた。
「そういうことはしないから」
「何があってもね」
「わかった」
それを聞いて静かに頷く椎名だった。そのうえで今はその場を別れた。その日の午後の休み時間であった。彼女はすぐに動いたのだ。
四組に行ってだ。いつも通り自分の席に座っている月美に声をかけた。
「ねえ」
「あれっ、愛ちゃん」
「ここにいていい?」
顔をあげてきた月美に応えたのだった。
「よかったら」
「いいけれど」
「じゃあここにいる」
こうしてその場に立ったままでいようとする。しかしここで月美が彼女にこう言ってきたのだった。
「あの、席は」
「あるの?」
「ええ、あるから」
こう言うのだった。
「よかったら持って来て座って」
「わかった」
椎名はそのまま月美のところで座った。座ったままだがそれでもその場所にいたのだった。その日から休み時間になるといつも月美の傍に来た。しかしである。
それを見た星華がだ。忌々しげな感じで彼女に言ってきたのである。
「ちょっとあんた」
「何?」
「三組のクラス委員よね」
「うん」
星華に顔を向けてこくりと頷く。
「そうだけれど」
「じゃあ何でここにいるのよ」
忌々しげな顔で言うのだった。
「三組の人間がどうしてなのよ」
「いて悪いの?」
椎名はこう星華に返した。
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