巻ノ百五十二 迎えに向かう者達その五
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「紛れもなくな、だからな」
「それでか」
「この首をやろう」
氷刃はこのことも自ら口にした。
「そうしよう、ではな」
「それではか」
「早く取れ」
その首をというのだ。
「そうせよ、よいな」
「わしは首をなぞ欲しくはない」
霧隠はその氷刃に表情を変えずに述べた。
「最初からな」
「手柄は欲しくないか」
「手柄なぞ何の意味もないわ」
今度は笑って言った。
「今のわしにはな」
「最早そうしたものはか」
「いらぬ様になったわ」
死んだことになっている今はというのだ、幸村だけでなく十勇士達も大坂の戦でそうなったことになっているのだ。
「ならばな」
「よいか」
「わしは勝った、そしてじゃ」
「そのうえでか」
「殿をお迎えに行く、そして殿と共にな」
まさにというのだ。
「帰るわ」
「そうするか」
「左様、だからお主とはこれで別れる」
戦は終わった、それでというのだ。
「ではな」
「これでか」
「さらばじゃ」
氷刃に背を向けた、そうしてだった。
霧隠もまた幸村のところに向かった、戦のその後で。
猿飛は雷獣と天守の最上階で闘い続けていた、二人はそれぞれ木の葉の手裏剣と雷を放ち合っている。
しかし勝負は互角だった、それで猿飛は言ったのだった。
「おいらとしてはな」
「戦は」
「せっかちな性分でな」
それでというのだ。
「早く決めたいんだがな」
「聞いた通りの性格ですな」
雷獣は猿飛のその言葉に思わず笑って返した。
「せっかちとは聞いてますが」
「如何にも」
その通りと返す猿飛だった。
「おいらは十勇士で清海と並ぶせっかち者よ」
「やはりそうですか」
「だから戦だってな」
「すぐにですか」
「終わらせたくなるんだよ、とはいってもな」
「忍ぶ時はですね」
「おいらも忍者の端くれだからな」
それ故にとも言う猿飛だった。
「忍ぶ時は忍ぶしな」
「戦の時も」
「機を見る時は見るさ」
そして待つというのだ。
「しっかりとな、しかしな」
「今は」
「そろそろ決めたいがな」
「そうですか、それはです」
「お主もか」
「私もせっかち者でして」
それでとだ、雷獣は猿飛に話した。
「この度の戦はそろそろ決めたくなったか」
「はい」
両者は木の葉や雷を投げ合うだけでなく剣を出して斬り合いもしている、こちらの腕も互角で何百合も剣を打ち合っているが勝負はついていない。
その中でだ、雷獣は猿飛に言ったのだ。
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