4-2話
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。
彼の眼には影から突然現れたように感じられたのだろう。
「あ…あぁ、君は?」
「客の一人ですよ」
蒼い髪をさせた女が珍しいのか動揺で目線が忙しない。
初老《しょろう》漂わせる皺《シワ》のある顔に考えが透けて見える。
訝しんではいるようだけど、客の一人だと聞いて平静を装って穏やかに応えてきた。
「…そう、ですか。 どうかしましたか?」
「旅客機の状態について」
ビクリ、と反応して目の色が変わった。
機長は一瞬だけ返事に窮して、すぐに取り繕って言葉を返した。
「…残念だが、飛ばす事はできない。 エンジンは生きてはいるが、滑走路もなしには…な」
ふぅん…飛ぶ事は出来るってわけか。
アタシならその滑走路を何とか出来ると言ったら、この人はどんな顔をするだろうか?
いや…やめておこう、色々と面倒を引き起こすから今は様子見だ。
それに…「旅客機の状態」と訊かれて反応を見せたのは“何かある”という事…だけど、それは“飛べる状態”とは別の所にある。
「だが安心してください、救助は必ず来る。 無線で救助を要請していたから、そう心配しなくても大丈夫ですよ」
「…ダウト」
機長の言葉を聞いて、アタシは呟いた。
「え?」
「何でもないですよ。 わかりました、アタシも挫けないように頑張りますね」
満面の作り笑いを浮かべて、取り繕《つくろ》った言葉を向けてからアタシは踵を返した。
今の受け答えで解ってしまった。
薄っぺらい表情を張り付かせ、アタシを真っ直ぐに見ない目が泳ぎ、喉を震わせた声を出す機長は雄弁《ゆうべん》に語った。
彼は…己の言葉に嘘を付いている。
彼自身、希望を見出していない言葉はアタシを不愉快にさせる。
嘘を付いている本人がその表情の裏で不安を押し隠しているのがわかる。
だが、それでもこの人達は希望に縋りたいから、彼の嘘を見破る事が出来ない。
皆の不安を和らげようとするその場凌ぎの苦しい嘘に騙されている…というのを理解した。
アタシから彼から訊く事は何もない。
機長が何か隠しているのか…その理由を探るためにアタシは、視線の先にある旅客機へと向かった。
―――。
真っ先に向かったのは操縦室。
何かあるとしたらまずはここ。
機械類に関してはそれほど詳しくはないけど、機長が知るものがあるとすればまずはここだろう。
狭い通路の先に奥まった機首部分に当たるコクピットにアタシは一人佇む。
お邪魔しますよ、と誰に言うでもなくそう呟いてから扉を開けようとした。
「…ん? 鍵がかかってるのかしら?」
前に押しても後ろに引いても、かと言って横にも上にも動かない。
鍵をかけた
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