4-2話
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彼の中の獅子《チカラ》が開放されるかもしれないルールが在る社会世界とは全く違う世界。
草原が広がる野生の世界に放たれたライオンが今にも走り出そうとしている。
そんなイメージを連想するのは間違いではないだろう。
「ふふふっ…人間向きではないけど、貴方みたいなタイプにはさぞかし爽快かもよ、ここは」
「知った風な口を聞くんだな」
「一日くらい辺りを見て回ったからね」
くくっ、と得意気になる。
口が饒舌になって教えるべきじゃない事まで言ってしまうが、この子なら言いふらす事はないだろう。
「…そう言えば、お前は昨日この中にはいなかったな。 行方不明者の内に含まれていたのか」
「行方不明者?」
「乗組員と一般人、それと俺と同じ学校の生徒がな。 その内の一人がお前だろ」
「かもね」
行方不明とはちょっと違うけどそう言っておく事にする。
その他については心当たりはあるけど、獅子くんは別に知りたいというわけじゃなさそうだ。
単に思い当たる事があって口にして、アタシが疑問を浮かべたらそれに答えた。 それ以上でもそれ以下でもない何でもない会話だ。
「もののついでに訊くけど、機長とか知らないかしら?」
「知らねぇな。 忙しそうに声をかけて回っているようだがな」
成程。 あまり動かずに適当に周りを見ていれば見つかるかな。
「ありがとう、獅子くん」
「…その呼び方はやめろ」
不機嫌そうになって眼を細めるが、さほど怖いとは思わない。
ニックネームを付けられてむくれる程度とは、可愛い所があるじゃないか。
「あはは、名前を教えてくれたら考えておくわ」
名前など知らなくてもアタシが彼という存在を知っているだけで十分だ。
彼みたいな存在はその在り方と印象だけで物語るのだから。
だから、彼に名を出す暇もなくアタシはその場から立ち去っていった。
―――。
しばらくして、機長は見つかった。
獅子くんが言っていた通り、乗員に声をかけて元気付けて回っている様子だった。
眼の下には隈が浮かんでいて疲れているのが見て判る。
それを気遣っている乗組員はいるが、その他の一般人は全ての面倒とプレッシャーを彼に押し付けている。
何とも強い人だ。 責任感が高く、精神力で体を突き動かしている様は褒めたくなる。
そういうのは嫌いじゃないけど、何ともご苦労な事だ。
ついでにもう一つアタシの分の苦労を背負ってもらうとしよう。
溜め息を漏らしながら森の中へと行こうとする後ろ姿を追う。
周りに誰もいない事を確認して、一人のところを見計らって接触してみた。
「機長さんですね?」
隠行《おんんぎょう》で気配を消して近づいたら驚かれた
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