巻ノ百五十二 迎えに向かう者達その二
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「そのことを申し上げさせて頂きます」
「左様ですか、では」
「はい、これで」
「貴殿の望まれる場所に行かれよ」
「殿の御前に」
「貴殿は最後の戦を終えられました、ならば大御所殿を倒しにも行かれませぬな」
「決して」
これが伊佐の返事だった。
「ありませぬ」
「ならば構いませぬ、それでは」
「これで、ですか」
「行かれよ」
彼の望む場所にというのだ。
「そうされるがよろしかろう」
「有り難きお言葉、さすれば」
「これで」
「おさらばです」
互いに別れの言葉を贈り合いだ、両者は別れた。伊佐もまた戦の後は自身の主のところへと向かうのだった。
清海も土蜘蛛と闘っていた、その金棒が唸り土蜘蛛の巨大な鎖鎌とぶつかり合う。
そこに互いに術も使い合う、しかし。
決着はつかない、それで土蜘蛛も言った。
「恐ろしいこと」
「戦の決着がつかぬことがか」
「まさに、わしの力を以てしても倒せぬとは」
「見ての通りじゃ」
清海は土蜘蛛に笑って答えた。
「わしも意地があってな」
「それでか」
「負けるつもりはない、いや」
「わしに勝つか」
「そのつもりだ」
まさにというのだ。
「だからだ」
「ここにおるのだ」
「今もか」
「左様」
その通りだというのだ。
「こうしてな」
「そうか、ではな」
「お主もじゃな」
「その様に言っておく」
清海と今ここにいる理由は同じだというのだ。
「わしもまたな」
「勝つつもりだからだな」
「ここにおる、忍とは文字通りよ」
「忍ぶ者達」
「戦も勝つ為にするものではない」
本来はだ、そこは武士達とは違うのだ。
「己が生きる為にするものよ」
「必要とあれば逃げるな」
「そうする」
清海に対してこう話した。
「それが忍だからな」
「そうじゃな」
「しかしじゃな」
「我等十二神将は違う、そして今はな」
「特にじゃな」
「貴殿程の剛の者ならば」
それならばというのだ。
「戦ってそしてじゃ」
「勝ちたいか」
「だから今ここにおる」
「成程な、しかしな」
「それでもじゃな」
「わしはこの金棒と土の術では誰にも負けぬ」
この二つではとだ、清海は土蜘蛛を見据えて言った。
「誰にもな」
「そうじゃな、ではな」
「これよりどちらが上か」
「決着をつけようぞ」
二人で言い合う、そしてだった。
二人共己の周りに巨大な岩を幾つも出した、その岩達を宙に漂わせそのうえでこうも言い合ったのだった。
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