閑話:帰りを待つもの
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行く。
「七十八点です。集中力に欠いているようですね、試験以前の問題です」
一瞬、教室の中が騒めいた。
平均点を考えれば、優秀ともいえる点数であったが、彼にしては悪いともいえたからだ。
二年前に急遽転校してきたこの少年は――学年でもマウアとトップを争うほどに優秀で、少なくとも今までに教師のお説教の餌食になったことはない。
今までに周囲を圧倒していたマウアにとっては、初めてのライバルともいえる少年だ。
「珍しいこともあるもんだね。でも、良かったねマウア。トップになれて」
「うーん。本調子じゃなかったみたいだから、それで勝っても嬉しくはないかなぁ」
「おお、上からの意見。一度でいいから行ってみたい」
「アイラちゃん。また怒られるよ?」
「はーい」
冗談めかして返事をしてアイラは、姿勢を元に戻した。
今度は教師に見られずに、すんだようだ。
でもと、マウアは教壇の方を見ながら、アイラの言葉の言った珍しいとの言葉を思い返した。
確かにユリアンが、このような成績をとるのは珍しいことだった。
転校してきてから二年、成績も運動も常に上位で――さらには中性的な顔立ちを持つ少年は、女子の中でも大人気で、好きだという子も少なくはない。
見れば、周囲の女生徒には心配するような視線が送られている。
教師から返された答案を、少年が謝罪の言葉とともに手にする様子に、相変わらず人気だなと、他人事の様にマウアは思った。
+ + +
授業は午後に入って一時間ほどで終了した。
まだ明るい街を、友人たちと一緒に帰っていく。
大きな鞄を背負いながら、試験について語る姿はいつの時代もかわらないのだろう。
だが、内容自体はいささか時代によって変わるのかもしれない。
「それでね、ママが、パパにいったの。戦争でいない間、ちゃんと掃除してた? って。だから、今度の休みはパパと大掃除なんだよ」
手を広げながら大げさに話すのは、アイラ・オーウェンだ。
いつも話題を振るのは、彼女が最初だった。
明るく、元気な様子には、マウアも助けられている。
そんな彼女の母親の仕事は、同盟軍の軍人であり――アイラが語るには、つい最近まで遠い場所で戦っていたらしい。
そんな彼女の母から、しばらくぶりに電話が入り、もうすぐ帰るということが伝えられたということを、週末の大掃除を大げさに嘆きながらも、どことなく弾んだような声で話している。
いつもより一段と高いテンションに、マウアは、もう一人の友人であるワン・ファリンと顔を向かい合わせて、小さく笑った。
「アイラちゃんのお母さんはいつ帰ってくるの?」
「それが聞いてよ、マウアちゃん。まだ二週間以上はかかるって」
「それは……アイラちゃんが今週
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