第一章
第6話 二十二歳の孤児
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四人座れるかたちだ。黒板と教卓もある。
目の前には、俺が挨拶をするということで呼び集められた三人の男の子と二人の女の子、合計五人の子供たちがいる。
ずいぶん人数が少ないな、と思った。
孤児院だから、少ないほうが情勢が安定しているという意味になるだろうし、そのほうがよいのだろうけど。
今現在、全員がこちらを凝視している状況だ。
相手が子供とはいえ、意外と緊張する。
あまり視線を浴びるのは好きではない。
高校までクラス役員などもやったことはなく、大学のゼミでも自分の発表の回以外は隅に座っておとなしくしていた。耐性はない。
貧血に似たような状態だ。杖が欲しい。
「あー、えーっと。今日からお世話になりますオオモリ・リクと言います。じ、実はまだこの町……あ、いや、この国、かな? この国に来て日が浅いので何もわからない状態ですが、よ、宜しくお願いします。
あ、あと連れに白い犬がいますので迷惑をかけることがあるかもしれませんが、えーっと、宜しくお願いします」
激しく噛んだ。
パチパチ。
自己紹介した俺に対して、かなり暖かめの拍手が送られた。
横には職員もいて、同様に拍手をくれている。
今ここにいる職員は四人だけだが、院長の話では他にも住み込みではない非常勤の職員がいて、全員そろえば結構な数らしい。
突発的な出来事で孤児が増えたとしても、ある程度回せるような体制になっているのだろう。出勤日以外の日は院外の仕事をしているのだとか。
ちなみに。今ここにいる四人の職員のうち、一人はカイルだ。俺が院長から説明を受けている間に町役場から帰ってきていたらしい。
しどろもどろな俺を見てニヤニヤしながら拍手をしている。
もー笑いたきゃ笑えよ、という感じだ。
こうして俺は、二十二歳の孤児として再スタートすることになった。
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