第一章
第6話 二十二歳の孤児
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二の現象」というのは考えにくい。
別に自分は特別な人間などではないし、何かに選ばれた人間などということは絶対にない。普通の大学生だ。
頻度が低いとしても、自分の身に起きることであれば他人にも起きると考えたほうが自然だ。
たしかに、過去をずっとたどっていけば何かがわかる可能性はある。
そうか……。
前例がどうなっているのか確認をするということは、言われてみればごく当たり前の発想だ。まったく特別なことは言っていない。
ただ、俺は言われないと気づかなかった。
情けない話だが、このあたりは日々問題の解決に取り組んでいた町長と、何となく毎日流されて学生生活を送っていた俺との差なのだろう。
「この町には、規模はけっして大きくないが図書館がある。過去の資料を調べることもできると思う。
それで見つからなければ、首都に行けば国内最大級の図書館がある。調べるのは大変かもしれないが、何か手がかりになる資料が見つかるかもしれないよ。
首都はそのほかにも、歴史に詳しい学者や博学な人がいるから、聞き取りをしていくのも手だ」
この町に図書館があるのは既に確認済だった。孤児院でも自由時間はあると思うので、まずそこで調べるところから始めるのがよさそうだ。
「まあいろいろ話したが。今後どうするにせよ、まだこの国、この町のことが何もわからない状態だろうから。当面はこの町での生活に慣れるということを第一にするといいね。焦りは禁物だ」
「そうですね……」
「ではこれでいいかな。また困ったことがあれば相談に来なさい」
「はい、本当に、ありがとうございました」
もう感謝の気持ちしかない。
何度も町長に頭を下げて退室した俺は、カイルに面会の順番がきた旨と俺の処遇が決まった旨を伝え、受付で紹介状を交付してもらって町役場を後にした。
歩きながら頭を整理する。
孤児か…………。
まあ、でも親はいない、家はない、資産もない。つまるところ孤児と同じだ。
しかし、カイルの奴は俺が孤児院所属になると聞いて、ずいぶんと喜んでいた。
結果的に同じところに住むことになるからだろうか?
ま、あいつは職員だから部屋は違うだろうけど。
あ。そういえば……。
クロは町長の話を理解できたのだろうか。できていないなら説明義務があるような気がする。
危うく気づかないところだった。
「クロ」
「なんだ」
「町長の話は理解できた?」
「ほとんどわからなかった」
やっぱり。
「今日から俺は孤児院という施設で生活することになる。お前も一緒だ。かまわないか?」
「かまわない」
あ、はい。
町の孤児院は木造だった。
二階建てで、小さい子供が走り回れそう
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