62部分:第五話 部活でその十一
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第五話 部活でその十一
結局ずっとジャージだった。一年達は練習の後で汗を拭きながら話をしていた。
「今日ずっとジャージか」
「まあ一年だと基礎トレばかりになるしな」
「これも当然か」
「だよな」
「そうだよな」
陽太郎もそれに入っている。皆で話す。
「やっぱりな、今は」
「袴着たいけれどな」
「今はまだ先か」
「仕方ないな」
わかっていることなのでそれはいいとするのだった。流石にこうしたことはわかっていないと部活はやっていけるものではない。
「最後にも掃除して」
「それで解散だよな」
「だよな」
こんなことを話してだった。掃除をして解散になる。陽太郎は制服に着替えて帰る時にだ。校門のところで彼女と会ったのであった。
「あれっ、また」
「会いましたね」
月美とである。彼女は彼に顔を向けてにこやかに笑ってきた。
「一緒の道場ですから。一緒になりやすいですよね」
「そうだよな。それでだけれど」
「それで?」
「あの本のことだけれど」
陽太郎はこの話を切り出した。そして二人並んで歩きはじめる。
「ほら、太宰の」
「どうですか?太宰は」
月美は太宰の話になると晴れやかな顔になった。普段はあまり明るいとは言えない表情であるが今は違っていた。その顔で応えてきたのだ。
「御伽草子ですよね」
「かちかち山の話もあったんだ」
「浦島太郎もありますよ」
「そうだよな。何ていうか」
「意外ですか」
「ああ、意外だよな」
こう答えた。
「太宰ってもっと何かこう」
「暗いですか?」
「そのイメージもあるしさ。結構明るいところもあったんだな」
「太宰は明るい性格だったそうですし」
「えっ、そうだったのか!?」
陽太郎は今の月美の言葉を聞いて思わず声をあげてしまった。
「太宰って明るい性格だったのか」
「意外でした?」
「意外も何も」
陽太郎の声はうわずっていた。そして実際に言うのだった。
「太宰が。そういう性格だったなんて」
「そうだったんです。それで作家ですけれど昼型の生活で」
「徹夜とかしなかったんだ」
「そうなんです。昼に起きて仕事するタイプで」
「それで生まれは」
「はい、津軽です」
太宰といえば津軽である。彼の一族は今でも津軽で政治家を出していたりする。彼の父や兄の代には津軽でも有名な名士であったのだ。
「それは御存知ですよね」
「ああ、津軽の大地主の家の出だったよな」
「そうです。太宰はその家で生まれ育って」
「色々あったんだよな」
これは陽太郎も知っている。太宰については言うまでもない話だ。
「確か」
「はい、複雑で興味深い生い立ちですよね」
「それで明るいんだ」
陽太郎はその話を聞きながら首を傾げさせている。
「何か信
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