第六十九話 西に向かいその四
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「だからな」
「奥さんと出来るだけいられる様になりたいんだね」
「ああ、今は本当に結婚してすぐにな」
同じ屋根の下で暮らしたのは一瞬だ、今振り返ると。
「そんな風になったしな。奥さんにも悪いだろ」
「人は家庭を大事にしろ」
「家庭を大事に出来ないと駄目だっていうしな」
よく言われている言葉もだ、久志は出した。
「だからな」
「そうしたことからも旗揚げしたいんだね」
「そうも考えているさ」
実際にとだ、久志は剛に答えた。
「この世界を救う人間が家庭かとか言うのは何だって言われてもな」
「仕事しか頭にない人間よりましだろ」
芳直は久志の今の言葉にすぐにこう返した。
「ずっとな」
「仕事しか頭になくて家庭を顧みない奴よりもか」
「それじゃあ家族を養っていてもな」
「人間として駄目か」
「奥さんや子供を見なくてどうするんだよ」
「家庭を持っていたらか」
「奥さんや子供を愛せない奴が何か愛せるか」
「仕事、って言ったら絶対に違うな」
久志は今言った自分の言葉をすぐにその口で否定した。それはどう考えても違うと言った瞬間にわかったからだ。
「それは」
「ああ、それはな」
「やっぱり違うよな」
「その通りだと思えないだろ」
「ああ、言ってすぐに思ったよ」
久志自身がだ、そうなった。
「趣味仕事とか仕事に憑かれてるとかな」
「そんな奴だろ」
「愛してないな、仕事を」
「そうした奴はな」
所謂ワーカホリックに過ぎないというのだ、そうした人物は。
「それで仕事が定年になったらどうなるんだ」
「仕事だけで家庭を顧みない奴がか」
「後はどうなるんだよ」
「まあそれこそな」
まさにと答えた久志だった。
「抜け殻だな」
「他に趣味もなくてな」
「そうした奴って本当に仕事だけだからな」
趣味も他にないというのだ、仕事以外には。
「それだとな」
「もうな」
「定年になったらやることもない、しかもな」
芳直は久志にさらに話した、自分達の世界で時折いるそうした人間のことを。
「これまで顧みなかった奥さんや子供にな」
「つまり家庭にか」
「捨てられてな」
「天涯孤独となるか」
「そうなるんだよ」
「熟年離婚か」
「これってそうしたケースもあるだろ」
仕事しかなかった人間が家族に切り捨てられる、そうなってだ。
「だからな」
「奥さんのことを考える俺はか」
「そんな奴よりずっといいだろ」
「そうしたものか」
「じゃあ何の為に結婚したんだってなるだろ」
仕事だけで家庭を顧みない人間はというのだ。
「家事か?性欲の解消か?」
「どっちも生々しい話だな」
「後のやつは年齢重ねたら弱くなるっていうがな」
性欲、それはだ。
「だったら余計にな」
「
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