06.そうだ、刑務所に逝こう。
第19回
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から声がして、ほんのりとした温かさに包まれる。
「………………グレース」
ふわふわとした髪が首に当たり、少しくすぐったい。
「如何為たの……? こんな場所まで来」
「主、少し黙ってて」
言葉を遮られ、強く抱き締められる。
あー、何か変な気持ち。
ただの黒猫が、人間になれて、しかも此処まで頼りになるとは。
「……いいよ。何が聞きたい?」
「如何為て来てくれたの」
「僕は主が大切なの。それじゃ駄目?」
「………猫のクセに」
「言っておくけど、僕は主無しじゃ生きていけない」
「…………猫のクセに」
腕の中で躰を半回転させられて、私はグレースの方を向く。
「どれだけ周りが主に酷い事をしたとしても、僕はずっと主の味方だよ」
「…………よくそんな恥ずかしい言葉をつらつらと」
顔が紅潮している気がして、顔を隠すように俯く。
その時、芝生を踏む音が聞こえた。
「………琴葉ッ!!」
嗚呼、葉月だ。
「琴葉君!」
「琴葉ちゃん!」
「琴葉さん!」
「琴葉さんっ!」
フランさんも、柳瀬さんも、柳瀬首領補佐も、涼花様も。
皆来てしまった。
「オイ、誰だお前! 琴葉を離せ!!」
「何で? 君は主を捨てたんだ。如何為て君の元に主は帰らないといけない?」
そうだ。如何為て葉月と何か。
「琴葉君、悪かった! 私が悪かったから……」
「今更謝ったところで、君が主に付けた傷が癒えることは無いよ。其程深い傷を付けたんだ」
そうだ。如何為てフランさんは意味が無いのに謝る。
「琴葉ちゃん、ごめんね! 私が貴女の能力に気付かなかったのも悪いの!!」
「琴葉さん、貴女は組織に必要なんだ。戻って来てはくれないかな………」
「………琴葉さん。わたしが言えることは無いけど……ママとパパの声を聞いてください」
もう何も聞きたくない。
もう何もされたくない。
もう傷付きたくない。
無理な願いだとは分かっている。
けれど。
「琴葉さん!!」
今度は聖月さん達。八人揃って、息を切らして此方に近付いてくる。
私はそんな八人に―――
「近寄らないで」
銃を向けた。
「私は前に居た場所に戻る」
葉月と柳瀬さんが顔を明るくする。が。
「私はグレースと共に、"軍"に戻る」
「は………?」
聖月さん達を含め、全員が言葉を失った。
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