4-1話
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月《あまのぶむつき》」
日本の名前だった。
髪が蒼いから日本語のうまい外国人だと思っていたけど、実際は日本人だったようだ。
それほど年が離れていないように見えるけど、どことなく年上っぽい雰囲気が窺えた。
もしかしたら…本当は見た目より若く見える日本人なのではないか?という考えが頭をよぎった。
「ハーフなのよ。 育ちは日本だしね」
「え、あ…?」
口に出していないのに、睦月さんはオレが知りたい事を喋り出した。
それがいきなりの事で咄嗟に反応できなかった。
「訊きたそうに顔に書いてあったよ」
「う……そんなに分かりやすい?」
「腹芸が出来ない顔ね」
そりゃそうだろう……オレ、バカだし…。
ふてくされて、渡された非常食を食う。
あまり美味しいわけじゃないが、腹が減っていたから贅沢は言えなかった。
「よ、よろしく…睦月、さん…」
「ええ、よろしくね」
睦月さん――若く見えるからさん付けはちょっと慣れないな――は非常食を真理谷にも渡す。
続いてCAに渡そうとした。 だがその非常食に眼もくれず、ただひたすら泣くばかりで取り付くシマがなかった。
「まだ泣き止まない?」
「えっぐ……っう……ぅ〜……えっぐ…」
この調子である。
あの怪物のような鳥に間近で襲われていたから、すごい怖い思いしたのはわかる。
だけど、いい加減泣き止んでほしいと思うほどに鬱陶《うっとう》しくなってきた。
「……ふぅ、しょうがないわね」
そう言って睦月さんはCAの隣に座った。
その時、丈の短いスカートから太ももの付け根がギリギリまで見えてしまいそうになる。
それを見て、う…とオレの顔が熱くなった。
こんな時にスケベ心は出ず、気恥しさが勝って視線が横を向いた。
「よしよし…」
慰めように頭を撫でた。
「う…うぅ………えくっ……」
いや、実際慰めているのだろう。
頭を撫でられたおかげか、CAの嗚咽《おえつ》が少しだけ一段階下がったような気がする。
まるで子供扱いだ。
「ねぇ、せめて名前くらいは言ってくれないかしら? ね?」
なんとも優しい口調だ。
睦月さんの方が童顔で年下のように見えるが…実際は女性らしい魅力――主にスリーサイズ的な意味で――に勝るCAは終始泣いてばかりで、頭を撫でられているのだからどっちが年上なのだか判断できない。
と言っても、実年齢なんて知らないのだけれど。
「ひく…ひっく………んぅ……えぐ……」
「ふぅ…仕方ないわね」
「全く……おい、真理谷!」
こんな時だってのに…自分は関係ないとばかりにノートパソコンで弄っている真理谷を諌める。
「てめぇー、こんな時でも
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