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緑の楽園
第一章
第5話 町長の提案
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いるんだよ」
「オレも今日町長に呼ばれたんだけど、ちょっと早く着いちゃってね。ていうか、そんなおっかなびっくりやってないで堂々と入って大丈夫じゃないの? こんな感じで」

 そう言うと、少年は扉をバンっと勢いよく開けた。
 ――あわわわ。まだ心の準備が。

「おはようございます!」
「カイルくんか……おはよう。いちおうノックをしてくれと以前も言ったはずだが」

 ほら見ろ……。

「そちらのかたがオオモリ・リクくんかな? 私が町長のイチジョウだ。以後宜しく」
「あ、失礼しました。オオモリ・リクと申します。宜しくお願いします」

 町長は初老の男性だった。
 白髪交じりの黒髪で、確かに町長らしい威厳はあるが、優しさも備えた顔をしている。

 もっとも、今までの人生、あまりたくさんの人に会ってきたわけではない。
 なので正しいイメージかどうかはわからないが、怖すぎな人ではなさそうなので少し安心した。

 しかし「イチジョウ」ということは、「一条」ということだと思う。
 俺の知る日本でもあり得そうな、なにやら藤原氏の流れっぽい名字だ。
 そのような人もこの国には存在するということになる。

「その犬はクロと言ったかな。真っ白だ……なんと神々しい姿であることか。たしかに霊獣様そっくりに思う。噂どおりだ」
「霊獣様ではなくてペットですけどね」

 最初が肝心なので、しっかり否定しておく。
 クロを見ると、お座りの姿勢を取って町長を見ている。それで挨拶としているのだろう。

「ふむ、そうなのか。そのようなペットは今まで見たことがないがな……。
 この町で真っ白な犬が見られるということは、とても縁起が良いことだ。これからも時間があれば街中を散歩して、みんなに姿を見せていってほしい」

 ……。
 まあ、散歩はすることになるとは思う。
 そうしないと、クロが運動不足になってしまうから。

「さて、では早速話を。カイル君はこの後に話をする予定なので、下で待っていてくれないか」
「んー。ここにいちゃダメですか?」

「お前、居てどうするんだよ……」
「いや、なんかさ。兄ちゃん凄い緊張してるからさ。オレいたほうがよくない? ホラホラ。服も汗でベチャベチャじゃん」
「コラ抱きつくな」
「うん、あまり汗臭くはないね」
「ニオイを嗅ぐな!」

 町長がふうと溜め息をついた。

「とりあえず下で待っていなさい」

 カイルは追い出された。
 クロが彼をじっと見つめていたが、何か思うところでもあるのだろうか。
 ……まあいいか。

 なんだか今のやり取りで少し緊張がほぐれた。いちおう彼に感謝はしよう。

「ずいぶん彼は君に懐いているようだね」
「何ででしょうね。でも俺としては入
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