第三章
旅する者
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目が覚めると、目の前に見えたのは深淵の森だった。
振り返って後ろを見ると、優しい緑の平原が広がるばかり。
どうやら、入口まで飛ばされたようだ。
「…………」
イトゥラセンの王が頼んだ事と違う、目的。
それを果たす事が出来なかった事に対して、エレトは少し残念な気持ちを抱いた。
恐らく、何かしらの理由が無ければ再び魔女には会えないだろう。
そう思い、踵を返して平原を歩き出した。
エレトは、知りたかった。
本当に破滅を望む魔女ならば、出会った時点で殺すのが普通だ。
しかし、ただ魔女の昔話を聞いて、怖くないと強がったエレトは何故生きている? 何故殺されなかった?
真実を知るまで、諦めるつもりは無い。
俯いたまま歩いていたが、ふと、顔を上げた。
顔を上げたから気付いたのだろう。
小さな子供らしき人物が、狼の魔物に囲まれている事に。
その光景を視界に捉えた直後、エレトは剣を鞘から引き抜いて走り出した。
狼の魔物は向かってくるエレトに気付いて襲い掛かる。
直進してきた魔物を回避し、子供の所へと駆け寄る。
すぐさま振り返ると、飛び掛かってきた魔物達を、持っていた剣で一気に真一文字に薙いだ。
魔物達は口から体が裂け、地面に崩れ落ちる。
これにより、残りの魔物達怯むのが分かった。
「……これでも、まだ牙を向けるか?」
剣先を向けて言うと、魔物達は雲の子を散らす様に逃げていった。
「あー、えーっと、どうもありがとう……」
後ろから子供の声が聞こえ、振り返る。
「……随分と厄介な事に巻き込まれたな。大丈夫……?」
大丈夫かと聞こうとした時、人間にはあり得ない容姿が見えて言葉を一瞬失った。
羽飾りのついた帽子、黒いベスト。青いズボンに紺色のブーツ。
帽子からはみ出る猫耳、背中で揺れる尻尾。白い毛で覆われた肌。
「……〔ケット・シー〕か?」
その子供はまさしく、妖精猫ケット・シーだった。
「ん? 僕が珍しいの?」
「……あまり見ないからな」
「へぇ〜、そうなんだ。あ、助けてくれてありがとう。
僕は「ネウリア」。相棒と各地を廻る旅人……いや、旅猫」
ケット・シーのネウリアは少し考えた様子で呟く様に言った。
「俺はエレト。エレト・ディシア。……相棒と言ってたな。はぐれたか?」
はぐれた、と言う言葉でようやく気付いたのか、ネウリアは辺りを見渡した。
「あれ、そう言えばいない……おーい! 「リィーエ」!」
大きな声でネウリアが叫ぶ。しかし、こだますばかりで何も反応は無かった。
来ない事に、ネウリアはがっくり肩を落とす。
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