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彼願白書
逆さ磔の悪魔
ゼロ・アワー
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だからこそ、木曾はこうなった原因を絞れた。
つまりは、彼女の持つ弓は、ただの弓ではなく、あの空母は、木曾の斬撃を受け止めるほどの筋力と反応速度を持っているということ。
それだけでも、驚嘆に値する。

「こいつ、やるな!」

鍔迫り合いにはならず、彼女が弾いたのに合わせて後ろに滑り下がるのを木曾は追う。
そこを待ち構えたかのように、彼女は手首を返し、弓の突端を木曾の腹に目掛けて突き出す。
木曾はそれを、体をひねるようにして無理矢理避け、尻餅を搗きそうになりそうな状態から転がるように離れて、バランスを取り直す。
そこに目掛けて、彼女は直ちに弓を構え直し、矢をつがえて射る。

「ちっ!」

木曾は撃ち込まれた矢を一閃して弾く。
ここまで一人に徹底した追撃をするということは、つまり、他への攻撃が薄くなるということで。
彼女が弓を後ろ手に振り抜いたところに、天龍の剣が激突する。
天龍の背中からの胴抜きは確かに防がれた。
だがしかし、それは、天龍の剣を全て防いだとは限らない。

「おせーよ、ノロマ。」

弓を持った右手が、二の腕から落ちる。
背中から花咲いたように、血が噴き出す。
背中に深々と切り込まれた傷は、背骨すら裁っているだろう。
そして、右手の弓が落ちたことにより、止められていた天龍の最後の一太刀は振り抜かれ、彼女の胸を横薙ぎに切り裂いた。

彼女が倒れる。
空を仰ぎ見る瞳には、雲間を落ちてくる流星。
水の中に沈む耳には、波間を駆け抜ける晩鐘。

彼女のゼロアワーは、既に決まっていた。

「3,2,1,ドカンだ。」

全てが直撃し、ひとつの巨塔が彼女を飲み込んで。
そうして、彼女の姿は消え去った。

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