逆さ磔の悪魔
ゼロ・アワー
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りません。倒せ、という命令があるだけです。」
「相変わらずクレバーだなぁ、不知火。」
「激情家が、自分を抑え付けてるだけでしょう。」
次々に順番だって浦風達が同じように飛び降りていく。
最後に木曾が飛び降りて、海面に着水する。
ヘリは控えていた作業員がハッチを閉めると、Uターンして離脱していく。
彼等の無事な帰投を祈りはするが、すぐさま、前を向く。
祈る以上のことは出来ないのだから、心の内で祈ったなら、そこで終わりだ。
「お前ら!遠距離雷撃が命中すると思うな!奴が見てから対応出来る魚雷は絶対に通らないと思え!」
その天龍の言葉で、陽炎達は既に、天龍の指示を想定している。
ケース別の攻撃パターンを想定出来るだけ全てリストアップし、これから何をすべきか、既に体に叩き込まれている経験則が、彼女達を動かしているのだ。
「頭の上には構うな!走れ!」
天龍の命令は、極めて簡潔なもの。
故にこそ、彼女達の動きに一切の迷いはない。
上空のことは、鈴谷達に任せるという割り切りがあるから、彼女達は速いのだ。
波を越え、降りしきる砲弾と爆弾の水柱を突き破って、『彼女』の影へと向かって。
正直に言えば、水柱を避けて進むほうが速度は出る。
だがしかし、敵味方問わずに砲弾と爆弾が飛び交い、航空機が墜落し、破片が降り注ぐ状況では、そうも行かない。
一番の安全策は、『同じところにはほとんど落ちない』という確率を信じて、既に落ちたところを駆けること。
故に、まだ崩れていない潮の巨塔すら突き破って進んでいるのだ。
「主砲、有効射程圏内捕捉!」
「捉え次第、撃ち方始め!」
弓を持つ影はすぐそこ。
陽炎の発砲を皮切りに、次々と彼女達の攻撃は口火を切る。
影の彼女は、初撃を力場で反らし、射撃を躱しながら後退しつつ、弓に矢をつがえて、浮かべた黒い霧を穿つ。
矢に穿たれたそれは、数多の航空機となって陽炎達を迎撃するハズだった。
「させるかよ。そのやり口は、二十年くれぇは前に見たぞ。」
霧が引っ張られ機影に変わる、その瞬間を狙って、一閃が走る。
黒い霧を、抜刀した勢いのまま切り上げ、両断し、吹き飛ばす。
どう間合いを詰めたのか、木曾がまさに眼前にまで迫っていた。
「終わりだ!」
返す刀を袈裟斬りに振り下ろす。
いや、振り下ろした。
捉えていた彼女の肩ギリギリのところまでは。
「ふざっ……けんな!」
よりにもよって、弓なんかで止められた。
確かに、多少は機械的になっていて、少しは強度があるかもしれない。
しかし、木曾の思い切り振り下ろした袈裟斬りを受け止められる強度などあるわけがない。
そもそも、片手で持っている弓で受けられるほど、木曾が振り下ろす斬撃が弱いはずもない。
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