逆さ磔の悪魔
ゼロ・アワー
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す。」
「Go Ahead.」
この姉妹に、この期に及んで必要な会話など無い。
互いに互いが出来ること、出来ないことをわかっているのだ。
そうしてこの姉妹はいくつの海を越えてきた。
今日の海も特別なことはない。
霧島は、なくさないように、眼鏡を胸元にしまう。
初撃だけは、どうしても、この目で直に見なければいけないという制約。
しかし、それだけで彼女は、あることが出来る。
レーダーも利かない、届かない、そんな相手をただ一隻だけ明確に捉えて、例えそれが地球の裏側にいたとしても、そこが例え因果地平の彼方であったとしても、狙撃する。
そんな幻想染みた攻撃が、彼女の切り札のひとつ。
「距離、速度……よし!全門、斉射!」
斉射、というには遅く、バラバラな発砲。
距離も明らかに射程外、特別な砲塔を積んでいるわけでもない。
だがしかし、どうあっても霧島の砲弾は、リバースド・ナインに届く。
既に霧島は、命中するという結果を掴んだから。
霧島の砲撃は、そういうものなのだ。
命中する、という未来を確約された砲撃。
この砲撃が、彼女を彼女たらしめているモノ。
「次弾装填!」
霧島は、艤装の砲塔が次の発射準備をしている間に眼鏡を掛け直す。
もう既に見えているのだから、わざわざ、見直す必要はない。
「このまま圧迫し続けます。」
「オッケー、ガンガンやっちゃって。」
鈴谷は、迷い無く、ゴーサインを出す。
現時点で打てる、一番の有効手がこれだということくらいは、鈴谷もわかっている。
その上で次なる手を考えるのが、鈴谷の仕事だ。
「空母各員、攻撃隊発艦!全力で叩いて、アイツの身動きを止めるよ!」
「ヒュゥ、見ろよ木曾。坊ヶ崎、って感じだ。」
「いや、ありゃレイテだな。ここまで袋叩きにしてんのに、まだ耐えてやがる。」
「いや、あれはデンマーク海峡でしょう。たった一隻を相手に総力戦を仕掛けてるのですから。」
砲弾、爆弾、機銃弾に魚雷までしっちゃかめっちゃかに駆け回る有様を遠目に見て、天龍達は、有り体に言えば、ドン引きしていた。
ここまでの火力を叩き込まれて、未だに戦闘状態を維持しているのが、たった一隻の空母だというのだから。
「さて、そろそろ高度をギリギリまで落としてくれ。ここで飛び降りる。」
木曾の言葉に、パイロットはサムズアップだけして、機を一気に下降させる。
サイドハッチを開けば、すぐ下に高波がうねる海面が見える。
戦闘の余波で明らかに掻き回されて泡立つ水面が、眼下を流れていく。
「じゃ、ケリ着けに行こうぜ。」
天龍が一番最初に背中から飛び降りる。
「よーっし、やったんで!久しぶりの大物狩りじゃ!」
「大物も小物もあ
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