STAGE2-1:いらっしゃいませ、私の宝を頼みます。
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断言するグルービー警部。そこには絶対の確信があった。
「予告状を出しておいて時間を破るなど、テストの時間が終わってからこっそり記入欄に答えを書くようなもの。そんな真似は、あやつはしません。盗むなら、予告した時間には宝はあいつの手にあるということです」
「怪盗さんのこと、信用してらっしゃるんですね……」
「……いえ、これでも長年敵対してきましたからな。では失礼!」
よっぽど我慢していたのか慌てて店を出る警部。アネモネは小さく手を振ってそれを見送った。
ジュエリーショップから出た警部は、警備員たちに解散の命令を出した。そして店から離れコニコシティの船着き場に向かおうとする。
「予告状が届いたんじゃなかったのか!?」
「せっかく熱い中ここに来たのにー!」
「もう喉からからだよお……」
そんな人々の声を聴きながら、海のほうへ。コニコシティの光景を知る人ならご存知かもしれないが、そっちにトイレなどない。あるのは木で出来た停留所だけだ。
店内に注意が向かう人込みに逆流していく彼の様子は【上からよく見える】。
「海まで行って、立ちションでもする気か? 警部さん」
屋根の上からした青年の声に、人々がどよめいた。警部は突然かけられた声にびっくりして立ち止まる。
振り向くと、鋭い目で屋根の上から警部をはっきりととらえる島キング、リュウヤの姿が。ピジョットを隣に携え、日差しに照らされ汗の滴る彼は精悍という言葉がよく似合う。
「これはこれは島キング様……店内の声、聴いておられたのですか?」
「アネモネには携帯のスピーカーをオンにしてもらっていたからな。筒抜けだったよ」
「そうでしたか……しかし道を間違えたようですな。おっと、失礼──」
「ピジョット、『風おこし』!」
警部はまた霧吹きを喉にあてようとする。しかしそれを突風が弾き飛ばし、霧吹きが雑踏に紛れ手の届かないところへ。
「『模犯怪盗』に倣って一つお前の間違いを訂正してやる」
「ほお……」
「お前は俺が上を見張っているのは空からくる怪盗を見逃さないためだと言ったな。だが俺の狙いは逆だ。どこからきてどんな手段を使おうが、怪盗は宝を盗んだ後そこから脱出しなければいけない。三十分もあそこにいれば注意の緩んだ隙に木箱から宝を取り出すなどお前なら造作もないよな? グルービー警部……いや、怪盗クルルク!!」
リュウヤは竹刀で警部を差す。グルービー警部の顔をした彼は、ふっと笑みを浮かべた。
頭にまだ残っている髪をぎゅっと掴み引っ張る。べりべりと顔ごとマスクがはがれ、警部の服が上に舞った。
「さすがだね。僕の変装を見破ってくるとはさ!怪盗クルルク参上、『黄金の竹の鉄扇』は確かに頂いているよ!!」
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