第一章
第3話 見知らぬ町
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っているクロへと行く。
最初は診療所に迷惑だと思い、外にいてもらうつもりだった。
だが女医に「外は夜危険だから」と言われ、この位置に落ち着いていた。
「クロ」
「なんだ」
「何度か言いそびれてたけど。色々悪かった。あと……ありがとう」
「意味がわからない」
「俺のせいでいろいろ酷い目に遭っているだろ」
「遭っていない」
「いや、昨日さ。散歩のとき、お前吠えていたよな? あれは、崖が崩れかけているのを俺に知らせようとしていたんだろ?」
「……」
クロは答えないが、イエスだろう。
「俺、それ全然気づかなくてさ。そのせいでお前も一緒に落ちてしまって、悪かったと思ってる」
「お前が気にする必要はない」
「そのあとクマや野犬から助けてもらって。感謝もしてる」
「助けるのは当然だ」
クロの反応はともかくとして、やっと言えた。
ふう――。
心の中で、安堵のため息をつく。
少し、つっかえていたものが取れた気がした。
「で、クロ。それ、食べないのか?」
クロの隣には、お供えものが盛られた皿が、手つかずで置かれたままである。
「お前が先に食べろ」
こいつは俺に毒見をさせる気なのか。
一瞬だけそう思ったが、この流れでそれはさすがにないだろう。
クロの真意がわからない俺は、再度促す。
「それはお前が貰ったものだから、お前が食べていいんだよ」
「まだお前が食べていない」
……なるほど。そういうことか。
わかった。
クロはやはり犬なのだ。
犬は家族という群れの一員であり、群れのリーダーはおそらく俺の父親だった。
今は父、母、姉の三人が揃って居ないので、俺が群れのリーダーに繰り上がっている。
そういうことだ。
そう考えると、不可解だったクロの言動もすべて説明できる気がする。
森の中で先を歩けと言われたこと。体を張って俺を守ろうとしてくれたこと。俺が良いと言えばカイルと試合すると言ったこと。そして今、先に食べろと言われていること。
すべては、俺をリーダーと見立ててのことだったのだ。
頭の中でモヤモヤしていたものが晴れた気がした。
しかしそうなってしまうと、俺が食事を始めないとクロも食べないということになる。
うちの家族がそう躾けた結果なのだと思うが、今後のことを考えると少しまずいと思った。
「俺が食べていなくても食べていいよ。これからもそうだ。食べられるときに食べておかないと、身が持たないだろうしな」
「お前が先だ」
「……」
「……」
「……お前、頑固だな」
犬はみんなそうなのだろうか?
仕方ないので少しだけもらって食べたら、クロは堰を切ったようにガツガツ食
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