第一章
第3話 見知らぬ町
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つながれて、座っていた。
そしてかわるがわる前に出てきた町の人に、ペタペタと触られている。
紀州犬お触りの会になっていたようだ。
前に出ると、クロとまともに目が合ってしまった。
思わず視線を外してしまったが、頑張ってもう一回合わせた。
まずは謝罪とお礼だ。
「クロ、えっと、あの、色々悪――」
「すまなかった。リク」
「うえぇ?」
「守りきれなかった」
「……」
なぜか逆に詫びられてしまった。
クロは飼い犬だ。野犬については、いや、森についても“初見”だったはずだ。
当然、人間と野犬が戦えばどうなるかなどというデータもないわけだから、クロに過失はないと思うのだが。
……人間の感覚をあてはめて考えてはいけないのだろうか?
「やあ! 元気?」
ビックリした。
クロに声をかけたのはカイルだった。
そのまま手を伸ばし、クロをなでなでし始めている。犬が苦手な俺にはハードルの高い行為だ。
「あの時の人間か……。世話になった」
クロは礼を言っているようだが、カイルは特に反応していない。
彼はクロの話していることが理解できるわけではないようだ。
もしかしたら、俺だけがクロの言葉を聞き取ることが出来る状態なのかもしれない――そう思った。
「こいつ、カイルにお礼を言っているみたいだぞ。『世話になった』だってさ」
「え! 兄ちゃん霊獣様と話できるんだ? 凄いなあ。えへへ。ねえねえ霊獣様、強そうだし今度試合してよ」
霊獣じゃないからとか、犬と人間が試合してどうするんだとか、心の中で突っ込みを入れながら通訳しようとしたが、その前にクロが返事をした。
「リクがよいと言ったらな」
あれ?
カイルはクロの言っていることはわからないのに、クロはカイルの話していることを聞き取ることはできるのだろうか?
これは確認しておくべきだ。
「クロ、お前は俺以外の人間の言葉も理解できるんだな?」
「お前の言葉よりはずっとわかりづらいが」
「そうなんだ? それでも以前よりは少しわかるってこと?」
「以前よりはな」
ふむ。
よくわからないが、とりあえず、クロは俺とは双方向で会話可能。俺以外の人間とは聞くだけならほんの少し――ということか。
「ねえ兄ちゃん、霊獣様は何て?」
「だから霊獣様じゃないから……。まあ、俺が許可すればOKって言ってるよ。というか何で俺なんだ。関係ないだろうに」
「じゃあ今度やろうよ。兄ちゃん立会で」
「やだよ。めんどくさい」
「えー」
「あの、霊獣様の従者の方ですね? 療養中の……」
クロをつないでいる二人の片方が、俺に話しかけてきた。
「あ、えーっと。俺は従者ではなくて一応飼い主
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