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勇者のメイド
結婚
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口説く得意先の人もいた。

 主任の態度は堂々としたもので「彼氏の前で平気で女を口説く・・そんな方とまともな話が出来るとは思っておりません。

 そして何より、商談中に女を口説くなどと言うのは正気の沙汰とは思えません。

 会社の方に正式に抗議させていただきます」と言って僕を連れて得意先から帰ってきた。

 情けない・・・彼女を守るのは彼氏の役割だろう。

 僕は主任に守られてばかりだ。

 たとえ得意先の人が相手でも毅然とした態度で「僕の彼女なんですよ、手を出さないで下さい」くらい言うべきだろう。

 なのに愛想笑いでヘラヘラして彼女に守ってもらっている。

 こんな事では愛想を尽かされてしまう。

 そして思いついたのが冒頭のプロポーズなのだ。

 「気持ちは嬉しいけど今は仕事も大事なの。

 結婚はまだ良いかな?」そう主任に言われると思っていた。

 大事なのは「あなたの事を結婚を考えるくらいいつも考えてますよ」と主任に伝える事だ。

 煮え切らない態度で愛想をつかされないように気持ちを伝えるためにプロポーズしただけだ。

 「謹んでプロポーズをお受けします」主任は予想外の返事をした。

 しかも行動が早かった。

 次の日には「寿退社します」と会社に辞表を出していた。

 「中途半端な事はしたくない」と主任は家事に専念するそうだ。

 主任の両親は主任が小学校の時に離婚したそうだ。

 両親は共働きで、両親が離婚してからは母親についていったが、忙しそうに働いている母親しか記憶にないそうだ。

 結婚したら生まれてくるかも知れない子供のためにも家庭に入る事を決めていたという。

 会社の課長を始め多くの会社の上層部の人達に「辞めないでくれ、考え直してくれ」と主任は言われたらしい。

 主任が「会社に残って欲しい」という話に聞く耳を持たないので会社は僕に嫌味を言うようになった。

「お前が家庭に入る訳にはいかないのか?

彼女を失うのはわが社にとって大損害だ」課長はそんな事を言うが、よく自分の会社の社員に向かって「お前がかわりにやめろ」なんて言えるもんだ。

 でも僕も「主任が会社を辞めるのはもったいない」と思う。

 でも主任の言う「私が中途半端な事出来ないの知ってるでしょ?

 私が結婚生活と仕事を両立できるとは思えないわ。

 だったら家の中の事を間違いなくやった方が薫君のためにももし子供が出来た時にもその方が良いでしょう?」と言う話も一理ある。

 でもその理屈で納得するのは、家族になる僕だけだ。

 あ、薫というのは僕の名前だ。
 両親以外で名前を呼ぶのは主任だけだ。

 「戸村君」と主任は僕を呼んでいた
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