第一章
第2話 金髪の少年
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とは、あいつも助かっているということでよいのだろうか?
「俺、白い犬と一緒だったと思うんですけど。知りませんか?」
「もちろん知っているわ」
「無事……なんですね?」
「無事よ。後で会えると思うわ」
よかった。
あのまま死んでいたらあまりにも不憫すぎる。俺も家族に合わせる顔がない。
「あんな真っ白な犬は初めて見たわ。町の人たちが、神社に祀られている霊獣様にそっくりだって騒いでいるわよ」
え?
えーっと……。初めて見る? 霊獣様?
言っていることが色々おかしい気がした。
紀州犬に伝説があることについては、母親から聞いたことはあった。
紀伊山地では神の使いとされていたことや、高野山に空海を導いたと言われていることなどだ。
だが一般的には、そこまで神性のある犬という認識はないはず。
そこらの神社に紀州犬が祀られていることなども、なかったように思う。
「はぁ……そうなんですか」
気にはなった。
しかし今突っ込む話ではないような気もしたので、この場は適当に流した。
「さて、じゃあ質問させてもらうわね」
女医の問診が始まる。
最初は、既往歴や家族歴、現在処方されている薬がないかなど、ごく普通の内容だった。
そしてそれらが一通り終わると、医療とは関係のない質問も飛んでくる。
「あなたの身に着けていた服の生地、初めて見るものばかりだったわ。あなたはどこの国からの旅人さんなの?」
…………はい?
***
結局あのあと、女医とはかなり長くやりとりをすることになった。
そしてその結果……。
どうやらここが、自分が知る日本の千葉県ではない線が濃厚となった。
この国が日本という名前の国であることは確からしい。
女医に日本語は通じているので、公用語が日本語ということも間違いはない。
しかし、記憶障害を疑われて自分の出生地を聞かれたときに「千葉市です」と答えても、「そんな町はない」と返されてしまった。
他にも千葉の地名をいくつか挙げてみたが、「聞いたことがない」と言われた。
……日本という名前の、知らない国?
あの崖落ちで、そんな国に飛ばされたということなのだろうか?
まだこの病室だけしか見ていないので、その結論で納得しているとは言い難い。
ただ、病室内を見回すと、確かにおかしな点はある。
まず、電気の気配がない。
天井に蛍光灯がなく、壁にコンセントもない。
そして、樹脂製の物が、見る限りは一つもないようである。
現代日本の病室で、それはあまりにも不自然だ。
他にも、世話になっているのに申し訳ない言い方ではあるが、内装が全体的に前時代的な雰囲気
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