第二話 不吉な気配と隠された謎
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だるい。めんどい。帰りたい」
時間は限られている。期限までに提出しなければ何を言われるか…愚痴をこぼしながら蟹瀬 康太は必死になっていた。
「ふぁあぁ…眠いですぅ」
そんな必死な姿を見てLは悠長に欠伸する。
なんでAIが欠伸するんですかね。と暇なら問い詰めたい所だが、そんな余裕は一切ない。
これが俗に言う修羅場というやつなのだろ。
「へい。そい、よっと!」
かんっ。こんっ。かんっ。
小刻みでリズムのいい音が聴こえる。これは…なんだ。知ってる筈なのに思い出せない。
「せい。はぁっ。とうっ!」
かんっ。こんっ。かんっ。
なんだったかな。なんかの音なんだ。
子供の頃やった事ある。
確か、アレは…そう、けん玉だ!
チラ…っとLの映るディスプレイに目をやると画面の中でLは予想通り、けん玉をしていた。それもかなり上手い。
「……?」
なんで、AIがけん玉なんかしてるの?
「なぁ、L?」
「はい。御用ですか?」
「いや、用ってわけじゃないんだが…そのけん玉は?」
するとLは「これですか?」と言って何やらけん玉の技を披露してくれた。
「おぉ、上手いな」
「ありがとうございます。でも、私が目指す高みはこんなものじゃないですよ」
そう言ってLはけん玉世界選手権の動画を表示し再生し始める。
確かに、さっきしてたLの技より優れているが…この人達は何年も練習してここまで極めた人達であってLはAIで、しかも産まれてまだ一年も経っていない。Lに比べたらこの人達なんて────。
「いかん!今はこっちに集中せねば!」
けん玉世界選手権の動画に夢中になってる場合じゃない。今はお仕事優先だ!
「大変そうですね」
「あぁ、大変過ぎで死にそうだ」
「過労死寸前ですか。それは困りました。私、パパが死んじゃったら悲しいです…」
しくしく…っと涙目になるL。
お前…そんなに俺の事を心配してくれてるのか?
「Lぅ。お前って奴は…」
本当にいい娘だ。AIだけど本当にいい子だ。
いかん。俺も貰い泣きしちまいそう────。
「って、こんなドラマの名場面を再現してる場合じゃなくて!」
嫌でも現実に直面してしまう。
それくらい今の状況がヤバいという事なのだろう。
「パパ。何か私にお手伝い出来る事はありますか?」
Lは心配そうに話し掛けてくる。
「大丈夫(多分)なんとかなるよ(多分)」
ここで手を貸してくれ。と言ったらLは何の迷いもなく俺に手を貸してくれるだろう。
だが、それは駄目だ。ここは自身の寿命を削ってでも一人で終わらせなければならない。
「大丈夫だよ。そんな顔するなって、」
これ以上、Lを成長させてはいけない。
これ以上の進化はAIに必要ない。
自立行動能力を獲得し
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