逆さ磔の悪魔
ニア・ミス
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理由が、なんとなくわかったから。」
「あら、私のそうだったらいい、という……予測、願望の成就は、貴女の御墨付というわけね。」
「わかってるの?アイツ、アンタを完全に駒にするつもりよ?アンタがどう想ってるのか、それさえ計算済みの悪辣さで。」
「で、それの何が問題かしら?そんなことは、とうにわかっていることよ。」
涼しい顔で、叢雲の言葉を流して、加賀は歩き出す。
叢雲と擦れ違った時の加賀の表情に、叢雲は心当たりがあった。
その横顔を見てしまったら、もはや何も言えない。
だって、あの顔は。
言ってやりたいことはいくらでもある。
だが、言ったところでどうにかなるような、そんな余地など彼女にはないことがわからないほど、叢雲は愚鈍ではなかった。
むしろ、もはや無意味とわかりきってしまうからこそ、叢雲は歯痒くてたまらない。
だからこそ、叢雲は加賀を嫌っているのだ。
叢雲は、加賀のいなくなった通路で、壁を一殴りして、吐き出すようにごちる。
「なに、赤城みたいな顔してんのよ……」
「提督、ただいま参りました。」
加賀は司令室の扉を開け、奥の席で待っていた壬生森の前に立つ。
自分の推察を、奇しくも叢雲が支持してくれた。
ある意味、これ以上に頼もしいものはない。
ともすれば必要以上に自分に否定的な彼女の肯定だ。
そして、目の前にいる彼の一番の理解者と言ってもいい。
そんな彼女が、おそらくそうだろう、と思っているのだ。
壬生森は椅子から立ち上がる。
自分とほとんど変わらない目線で、彼の目を前から見る。
「さて加賀、君に預けるものがある。」
「物次第ではそのまま受け取ります。それでもよろしければ。」
「ネコババは、遠慮願うよ。」
加賀の言葉に、僅かに苦笑いしたあと、壬生森は内ポケットをゴソゴソと探る。
そこにあるものが何かを、加賀は知っている。
そして、やはり「それ」が出てきた。
緋色の珠の付いた、古い指輪。
加賀が欲しいと願っていたものが、そこにある。
いや、欲しいと願っていたのは加賀だけじゃない。
叢雲も、熊野も、おそらく欲しがっていたものだ。
もらう理由は、もはや関係ない。
もらわない理由など、毛ほどもない。
「加賀、今回の相手は、これを君に渡さねばならない相手だと思う。だから、こうして渡すんだけど……不純な動機だね、まったく。」
「 ……彼女の言葉を借りるなら、『何が悪いのですか?貴方は私という絶対的な最大戦力を手に入れ、私は貴方を想っているという確証を得られる。失うものもない。こんなにも素晴らしいことなのに。』と。」
加賀は左手を壬生森に差し出しながら、今度は彼女自身の言葉を口にする
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