第一章
第1話 違和感
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しく話すように促した。
***
クロから話を聞き出すのは難航した。
こちらが少し遠回しな言い方をすると、「意味がわからない」と言われた。
質問への回答もワンフレーズに毛が生えたような感じで、なかなか話が進まない。
脳が完全に人間と同じ仕組みになった訳ではないということなのだろう。
なんとか粘り強く聞きだした情報は、こんな感じだ。
やはり、クロも崖崩れの時に俺と一緒に落ちたらしい。
気が付いたら崖下であり、俺が横で気絶していて、吠えても反応がなかった。
クロは崖下は安全な場所と判断。ひとまず俺をそのままにして、家族を呼びに行ったそうだ。
しかし、崖上の景色は落下前に見たものと明らかに異なっており、心配になったクロは再び崖下に戻った。
だが、俺はすでにいなくなっていた。
そしてまた探しに崖上に戻ったら、俺がちょうどクマに襲われていた――ということのようだ。
途中、俺とクロは気づかないうちにすれ違っていたのだ。
目が覚めてからは、俺はいらんこと動かず、じっとしていたほうがよかったのかもしれない。
そして、「景色が違う」という見解は俺と一緒だ。
両者とも勘違いしているということは考えにくい。やはりここが崖落ちする前と異なる場所である可能性が高まった。
しかし……。
俺たちが気絶している間に、誰かが違う場所に運び、そこでまた放置、などということがあるのだろうか。
やはりもう少し確認する必要がある。
ここがどこなのかを確認し、そして元の場所に復帰できる道を探し、家族との合流を目指すべきだと思う。
さっき出現したいうことはこの先もクマが出る可能性はあるが、そのリスクはここにいても一緒だ。
「よし。歩くか。本当にここが違う場所なのかもう少し見て確認したい」
「わかった」
すでにクロは捜索済みであるため、「もう見た」などと言われ反対されるかもしれないと思ったのだが、あっさり了承された。
「あの、リードが切れてもう無いんだけど。つながなくても大丈夫だよな?」
「大丈夫だ」
「首輪はこのままでもいいのか?」
「構わん」
言い方がきつい。少し怖さを感じた。
さっきのクマはクロを見て逃げていたが、野生動物の勘で「こいつはヤバい」と思ったのだろう。
紀州犬は記憶が正しければ狩猟犬。気性はかなり荒いと聞いたことがある。
機嫌を損ねたら俺も咬まれるような気さえする。
今は中途半端に言葉が通じてしまうので、余計に不気味だ。
俺たちは歩き始めた。
散歩のときと一緒で、俺が一歩先に進み、斜め後ろをクロが付いてくるスタイルで進んでいる。
クロが前のほうが良いのでは
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