第一章
第1話 違和感
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、斜面をそのまま登り、バーベキュー場に戻って家族と合流してから対策を練ろうと思う。
突入した森の中は、実際に歩いてみると鬱蒼と茂る樹木で暗く、勾配も想像以上にきつかった。
足元もフカフカしており踏ん張れず、痛む体にはこたえる。
「おーい! クロ! いないのか!」
家でもクロを呼ぶことは今までほとんどなかったので、聞こえていても反応するのかという不安はあるが。
他に方法もないので、クロの名を叫びながらしばらく探した。
だが、見つからなかった。
時刻を知る手段がないため正確にはわからないが、一時間以上は探しただろう。
どこに行ってしまったのか。
――仕方ない。家族と合流してからクロを捜索しよう。
俺は捜索をいったん中止して、森の斜面を上に登ることにした。
上にずっと行けば散歩していた元の道に出られるはずだ。
しばらく登っていると、上の道に出た。
が、おかしい。
ここはクロと散歩していた道の延長であるはず。
だが、記憶の中にあるその道よりも、谷と反対側の林が茂って鬱蒼としすぎている。
それに、道幅が明らかに狭く、そしてかなり荒れている。
――ここ、どこだよ……。
明らかにおかしかった。記憶とつながらない。
嫌な予感がするが、ここだけでは判断出来ないので、ひとまず歩くしかない。
俺はとりあえず、バーベキュー場が存在するであろう方向に進むことにした。
――はあ……とんでもないことになった。今日は厄日か。
ため息をつきながら、歩き出す。
しばらく歩いたが、体は全身悲鳴状態だ。
だんだん足が思うように動かなくなってきた。
中学、高校と剣道部に所属しており、大学でも週三日のサークルで続けていた。なので、体の頑丈さには割と自信があった。
それでもさすがにきつい。
上を見上げると、雲がかなり厚い。一雨あってもおかしくなさそうだ。
日も少し落ちてきているのか、薄暗くなってきている。
――これは急いで家族と合流しなければ。
そう思ったとき、少し先の左側の木から、巨大な黒い塊が出てきた。
「……え?」
二メートル近くあるだろうかと思われる巨体。
全身を覆う黒い毛、太い四本の足。
今まで一度も見たことはないが、おそらく間違いはない。
これはクマだ。
ゆっくりと、近づいてくる。
に、逃げなければ。
そう思って足を動かそうとしたのだが、足が震えてうまく動かせない。
ドスン。
尻餅を付いてしまったが、そんな場合ではない。
早く起き上がって、回れ右して逃げなければならない。
動け。早く。
しかし体は動かなかった。
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