プロローグ
第0話 プロローグ
[2/2]
[9]前 最初 [2]次話
ン! ワン!」
回れ右して今まで来た方向に帰ろうとしたが、逆方向に引っ張られ、吠えられた。
「何だ? 吠えるなよ」
「ワン! ワン!」
ん?
「ワン! ワン! ワン!」
何を言っているのかさっぱりわからなかった。
少し迷ったが、無理矢理リードを引っ張って帰ることにした。
「散歩は毎日しているみたいだし、今日はもういいだろ。バーベキュー場に戻るぞ」
まだ吠えていたが、そのまま来た道を戻り始めた。
吠え声も、しばらく無視していたら静かになった。
今度は左手のほうが柵の側だ。
崖下の渓流の反対側には、色とりどりの木々。景色はいい。が、既に見飽きている。楽しみにはならない。
そのまま無機的に歩き続ける。
「ワン! ワン!」
また吠えられた。強い力で逆方向に引っ張られる。
手首が痛い。
「うるさいな。おとなしくしろって」
意味がわからない俺は、また強引にリードを引っ張り、進んだ。
と、その時。
ゴゴゴゴ……という音が聞こえてきた。
ん? 何だこの音は。
ゴゴゴゴ…………
地鳴りか?
こういうところで地鳴りって、確か……。
確か…………。
あ。
バキバキと、何かが折れるような無数の音がした。
ヤバい。早くここを離れなければならない。
これは崖崩れだ。
しかし足が動かない。
動け。竦んでいる場合ではない。
下半身にそう喝を入れたが、動いてくれない。
「――!」
足元が崩れた。
リードをぐるぐる巻きにした左手が、また強く引っ張られるのを感じた。
だがそれでも、俺の足は動かない。
ダメだ、もう間に合わない。
内臓が持ち上がる。
左手が上に引っ張られる感覚。
そしてその感覚もすぐに消え――。
自由落下。
「うあああ――!」
意識はそこで途切れた。
[9]前 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ