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緑の楽園
プロローグ
第0話 プロローグ
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ン! ワン!」

 回れ右して今まで来た方向に帰ろうとしたが、逆方向に引っ張られ、吠えられた。

「何だ? 吠えるなよ」
「ワン! ワン!」

 ん?

「ワン! ワン! ワン!」

 何を言っているのかさっぱりわからなかった。
 少し迷ったが、無理矢理リードを引っ張って帰ることにした。

「散歩は毎日しているみたいだし、今日はもういいだろ。バーベキュー場に戻るぞ」

 まだ吠えていたが、そのまま来た道を戻り始めた。
 吠え声も、しばらく無視していたら静かになった。

 今度は左手のほうが柵の側だ。
 崖下の渓流の反対側には、色とりどりの木々。景色はいい。が、既に見飽きている。楽しみにはならない。
 そのまま無機的に歩き続ける。

「ワン! ワン!」

 また吠えられた。強い力で逆方向に引っ張られる。
 手首が痛い。

「うるさいな。おとなしくしろって」

 意味がわからない俺は、また強引にリードを引っ張り、進んだ。

 と、その時。
 ゴゴゴゴ……という音が聞こえてきた。

 ん? 何だこの音は。

 ゴゴゴゴ…………

 地鳴りか?
 こういうところで地鳴りって、確か……。

 確か…………。

 あ。

 バキバキと、何かが折れるような無数の音がした。

 ヤバい。早くここを離れなければならない。
 これは崖崩れだ。

 しかし足が動かない。
 動け。竦んでいる場合ではない。
 下半身にそう喝を入れたが、動いてくれない。

「――!」

 足元が崩れた。
 リードをぐるぐる巻きにした左手が、また強く引っ張られるのを感じた。
 だがそれでも、俺の足は動かない。

 ダメだ、もう間に合わない。

 内臓が持ち上がる。
 左手が上に引っ張られる感覚。
 そしてその感覚もすぐに消え――。

 自由落下。

「うあああ――!」

 意識はそこで途切れた。
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