西暦編
第八話 リミテッド・オーバー@
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た桜色の勇者の姿がない。拘束していた器官はズタズタに切り裂かれ、たった今倒したはずの人影も一つ残らず消失していた。
「高嶋さん、大丈夫……!? 怪我は……見当たらないけど、目に見えない所とか……!?」
「ううん、大丈夫! ぐんちゃんが助けてくれたお陰だよ!」
「あ、ありがとう……よかった、本当に……」
ホッと安堵の息を吐く、七人の千景。
その光景に、横抱きに抱えられていた友奈が目をパチクリさせると、
「ぐんちゃんって、忍者だったの……?」
「違うわ、高嶋さん……これは、私が呼び出した精霊の能力……」
千景が纏った『七人御先』の力は、宿主を七つの地点に同時に存在させる。
この『七』の数字は不変のものであり、例え数人の千景が倒されたとしても必ず次の瞬間には『七人』に戻っている。つまり、千景は同時に七人全員が殺されない限りは不死身となったのだ。
勇者の『切り札』――――肉体に大きな負担がかかるため、極力使わないと事前に決めていた手段。
リスクは大きい、だがそれに見合うだけの力を確かに千景は感じていた。
「……やむを得ない、か……」
呟く若葉の眼前に、バーテックスが迫る。
『切り札』を使った千景より、若葉の方が対処できると判断したのか。事実、強化されているとはいえ、若葉の膂力では巨人型の一撃を受け止めることはできない。
だが、何も真正面から受け止めることだけが戦術ではない。
「来い――――」
若葉が切り札を発動させ、剛撃は空を切った。
体勢を崩した怨敵へ襲い掛かる蒼い閃光。瞬く間に前進へ傷を刻んだのは、新たな力を宿した若葉だった。
『源義経』――――それが、若葉が神樹から引き出した精霊の名前。
その昔、源平の合戦で活躍した若武者は、壇ノ浦の戦いにおいて甲冑を身にまとったまま舟から舟へと、まるで飛ぶように跳躍し、戦場を縦横無尽に駆け巡ったという。
八艘飛び、と呼ばれたその技を駆使する若葉は、空中を自在に跳躍する。
上下左右、あらゆる方向から襲い来る斬撃は、まるで嵐のようだ。
「これで、どうだ…………ッ!?」
瞬く間に、バーテックスの白い巨体に無数の傷が刻まれる。
再生しかけていた腕のような部位は千切れ飛び、足を模した器官も削り取られ、立っているのがやっとなほど。
このまま押し切れる、そう考えるのも当然のことだろう。
反撃の隙すら許さず、圧倒的な機動力で若葉は終始バーテックスを攻め続けていた。
足の一本を両断した際、勝利を確信した若葉の次撃は、体勢を崩しているだろう相手に止めを刺すためにより速く、単調なものになっていた。
離れていた友奈が異変に気付いた。が、警告は遅く、若葉は速過ぎた。
「若葉ちゃん、だめ―――――!!」
「!」
眼前に迫る白い棍棒に、
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