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勇者たちの歴史
西暦編
第八話 リミテッド・オーバー@
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た斬撃は、白い巨体に潜り込むことなく弾かれてしまう。渾身の一撃も、引っ掻き傷を一つ増やすのが精一杯な有様だ。
 そして、若葉も同じように焦りを感じ始めていた。
「千景、このバーテックスはさっきまでの奴とは違う! 一度距離を取って、態勢を立て直す!」
「えぇ、わかったわ……」
 千景が離脱するのを待って、若葉も一太刀の後に後ろへ跳躍した。
 バーテックスの身体に傷はない。損傷とも呼べない浅い傷は当然のこと、切断した足すらも修復が終わっている。そして、辛うじて人型のようだった外観はより人間の、屈強な男のような体躯に変形していた。
 そして、存在しない頭部の代わりに、肩から肩にかけて、大きく口を模した器官がパックリと開いていた。

「……■■■■■■■■■■■――――!」

「ぐッ…………!?」
「ッ……なに、こいつ……ッ!」
 突如響き渡った咆哮に、千景が悪態を吐く。
 思わず耳を塞ぎたくなるほどの大音響。それでも武器を構えた手を緩めないのは、耳を傷めることよりも決定的な隙を曝す危険を恐れたから。
 やがて咆哮が収まった。
 その、一瞬の間隙を捉えた奇襲だった。
「勇者、パ――――ンチ!!」
 若葉と千景が、連携して斬りかかるよりも速く、
 巨人型バーテックスが、隙のあった紅の勇者を叩き潰すよりも早く、
 倒れ伏していたはずの友奈の拳が、バーテックスの側面にめり込んでいた。
「もう、いっぱ――――つ!!!」
 ぐらりと揺れた巨体へと、間髪入れず二撃目の拳が叩きつけられる。
 追撃はしかし、手のような部位が割り込まれ防がれていた。それは、友奈の腕を絡めとるように伸び、逃れようとした彼女を拘束する。
「■■■■■■■■■■■――――!」
 勝ち誇ったように雄叫びを上げて、振り下ろされた棍棒の一撃が友奈を襲う。
「友奈…………ッ」
「高嶋さん…………!」

 飛び出した若葉は、彼我の距離から間に合わないと悟った。
 確かに、勇者の身体能力は人間の域を外れている。
 だが、届かない。若葉の全力を以てしても、彼女の刀が届くより早く巨人の一撃が友奈を捉えてしまう。
 
 若葉より先んじて距離を詰めていた千景は、寸前で間に合うと確信していた。
 だが、足りない。
 友奈の前に飛び込むことはできても、あのバーテックスの一撃を受け止めるだけの力が彼女にはない。
 友奈を救う力を求めて、千景は自身の内面に意識を集中させた。神樹の持つ概念記録にアクセスし、そこから力を抽出し、自らの身体に宿す――――、
「……、七人御先……!」

 凶悪な一撃は、五つの影によって阻まれた。
 拮抗は一瞬のこと、バーテックスは蹴散らすように剛撃を押し通し、邪魔な影をまとめて薙ぎ倒した。
 だが、その先にいるはずの、捕らえてい
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