西暦編
第八話 リミテッド・オーバー@
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いた。勇者の周囲で渦巻いている個体も五十弱ほど、上空や橋の上、海上を見ても白い巨体は見当たらない。
そう、《いるはずの小型バーテックス》が五百程度見当たらない。
「はッ――――――確かに、四国の勇者には有効な手なんだろうが、」
投影するは、禍々しい気配を纏う螺旋剣。
それを矢に変形させながら、士郎は真っ逆さまに落ちていく。
頭を下に、足を上に。重力に引かれるに任せて、冷静に造り出した矢を弓に番えた。
「俺にとって、それを視るのは二度目だぞ、化け物」
吊り橋とすれ違った直後、橋の下のそれと視線が交わる。
それは、巨大な蛇だった。
これまで見た個体の中で、これほど大きなものはなかった。おそらく、姿を隠した小型バーテックスは全て、この進化型へと融合したのだ。
勇者たちの死角から、まとめて喰い殺す機を窺っていたのか。蜷局を巻き、鎌首をもたげたバーテックスが飛び掛かる寸前、士郎の指が矢から離れる。
「我が骨子は、捻れ狂う……偽・螺旋剣……ッ!!…」
大気を捻じ切って放たれた魔弾が、蛇の頭部を粉砕した。
すかさず、準備していた矢を投影し、弓に番える。隠れ潜む敵が目の前の個体だけとは限らないと、何が現れても即座に射抜くつもりだった。
だからこそ、一瞬反応が遅れた。
「……チッ、こいつ」
弾けた頭部が再生し、狙撃手へと狙いを定めていた。
散り散りになった部位も同じだ。再生して、別の個体に―――元と同じ大きさの個体へと、形成されようとしている。
その光景を前に、士郎は投影していた矢を破棄する。
代わりに創り出したのは、鈍らの西洋剣。それに壊れる寸前まで魔力を込めて、矢へと形を変える。
「――――投影、開始」
矢は、貫通せずに頭部の成り損ないへと突き立った。
ただ一つ、矢を射かけられなかった進化型バーテックスだけが隙を突き、猛然と士郎へ襲い掛かる。
「ぐッ――――――、投影、」
大顎のような器官に弓ごと左腕を捕らわれ、士郎の顔が苦悶に歪む。
壊れた幻想で不完全なバーテックスが消し飛ぶ中、蛇型のバーテックスはくわえ込んだ獲物を逃さぬよう、海中へと引きずり込んだ。
その瞬間、若葉たちを取り囲んでいたバーテックスにも変化が生じた。
渦巻く中心が勇者から、一体のバーテックスへと変わる。
数十体の小型の個体が寄せ集まり、融け合い、姿を変えていく様はおぞましさすら感じる。唐突に始まった現象に千景と友奈は戸惑い、ただ一人それを以前見たことがあった若葉は焦りを覚えた。
「進化型は、これまでのバーテックスとは桁違いの強さを持っている! 二人とも、油断は絶対にするな!!」
バーテックス
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